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【理絵子の夜話】見つからないまま -42-終

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 理絵子は博物館でもらったコピーを住職に見せた。
「……なるほど。200年前でしたっけ」
「正徳5年ですね」
「探してみましょう」
 住職は言うと、その場を去り、本尊の奥へと向かった。
 出されたお茶とお菓子を頂く。
「お前といると何時代か判らなくなるよ」
 と優子。
「まぁ、古いままだからねぇ」
 待つこと5分。
「お待たせしました」
 住職はすっかり茶色くなった過去帳を持ってきた。
「夫が大工の伊平、妻がはなというんですけど……」
「待ってくださいね……」
 住職は手に白手袋をはめ、過去帳をめくった。
「伊平伊平……あ、ありますね。えー、はなは行方不明。夫伊平は落下事故で翌年に死んでいますね」
「え……」
 二人は顔を見合わせた。
 妻を古井戸に突き落とした夫が落下事故。
 因果応報とはこのことか。
「それで、このはなさんのことはこちらに書き加えますか?」
「いえ」
 理絵子は目を伏せた。
「むしろ、この子たちと一緒にしてあげてください。一緒に見つかったわけですし」
「わかりました」
 住職は言うと、立ち上がり、受付窓口そばの机に向かった。
 パソコンを叩く。
「本当、何時代なのやら」
 言ってる間にプリンタが動き、1枚印刷。
「これでよろしいですか?」
 鬼籍に並ぶ三つの名前、ようへい、ゆきえ、そして、はな。
「ありがとうございます」
 二人は頭を下げた。
 壺を納め、お経を上げ、住職の車でマンションへ向かう。
 予定の2時に少し遅れて到着すると、既に祖父母、そして不動産屋の男性が待っている。
 お経を上げて供養。
 その間に二人は海岸へ降りる。
 姉弟と、はなさんの“住んで”いた場所。
 満ち潮なので中へ入れない。そばの岩場に三人へ贈り物。
 ミニカー、ピアス、そして簪。
「ようへい君はいっぱい遊んで。ゆきえさんとはなさんはおしゃれを楽しんで」
 手を合わせ、冥福を祈る二人を巡るように、夏の到来を告げる潮風が吹き抜ける。

見つからないまま/終

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