【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -3-
ドタバタした動きに諏訪君が咳き込む。
「ああ、少し離れた方がいいよ。窓際へ」
廊下から最も遠いところ。レムリアは背中に手を回して促した。
彼はゆっくりした動きで窓際へ移動して行く。クラスメートが教室横切る彼を見、
ただ、話しかけようとはしない。
彼女は違和感を持ったが、机の準備を急いだ。
平沢が積極的に手伝ってくれ、机の再配列完了。
ここで普通なら席に着け、であろうが、浮遊する塵埃が目に見える状態では、呼吸器の疾患を持つ彼には問題。
手のひらにスプレーでミスト一吹き。
「え?」
見つけたクラスメートが驚いて声を出し、
「相原さんなんですか今のは?」
担任奈良井が気づいて詰問調。香水の類いは持ち込むな、がここの校則。
「はい?」
とぼける。
「手を見せて」
彼女は奈良井に両の手のひらを開いて見せた。何も無いよ。
「……いつぞやのチョコと一緒ね。錯覚かしらね」
「いい、ですか?」
「仕方ありませんね」
手を腰にしてため息。彼女は彼を席に座らせた。なお、実際には手品である。ブレザー制服の下に隠れて見えないが、ウェストポーチを身につけており、そこに何だかんだ入っている。“見えないように”出し入れできる。チョコ、の手品は自分が転入時にやったこと。
この辺りの小技は彼女の出自による。追って説明する機会があろう。
奈良井が咳払いして改める。
「では、連絡事項から……」
学年はじめはオリエンテーション。教科書の配布。すぐ終わる。
「で?家はどこなの?」
彼女は帰り支度の諏訪君に訊いた。
その目的、彼がこの学校に来たのは喘息軽減に少しでも良いように。ならば、通学路の選定でもその辺アドバイスできれば。および、途中でもしもアクシデントがあっても自分なら、というのもある。
一人歩きはさせたくない。うまく言えないが複数の要因によって。
果たして、彼の話した住所からして、通学の所要距離は1キロ。
聞いていた平沢が、
「結構遠いじゃん。歩くの?」
「どのくらい掛かるか判らないので、朝は車で送ってもらいました。でも、出来るなら、歩いて通いたいので……」
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