【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -5-
男子3名女子1名でぞろぞろ歩く。
公園北側は元の丘陵を生かした小山になっており、その山裾に沿うように歩道は緩いカーブを描く。歩道に面した斜面にはサクラが植えられ、石畳の歩道両脇にはツヅジが並ぶ。
「ツヅジはこれからですね」
諏訪君は言った。サクラが散って程なくであり、歩道にはその花びらの残骸も見られる。ツヅジはつぼみがチラホラという段階。
「最近サクラが早いと聞くね。あ、このツツジ“ドクガ”って付いたりする?」
彼女は平沢・辰野両君にどちらともなく尋ねた。
「さぁ」
平沢は気にしたこともないという風に首を傾げ、
「たま~に丸刈りにされてるね。丸刈りってドクガ退治でしょ」
辰野君、流石というところか。ドクガは幼虫の体毛・成虫の羽毛が細く、殺しても抜けて舞い飛び、皮膚の炎症や呼吸器疾患を招く。
アレルギー疾患には大敵である。
「虫なんか殺せばいいじゃん」
当然とばかりに平沢が言ったが。
「ドクガって毛虫なんだけど、殺すと毒の毛だけが風に乗って散らばるんだよ。だから殺虫剤蒔いたりするのは逆効果で、丸刈りにして密封してから処理するしかないんだ」
彼女は言った。
「へー。女の子って虫なんか興味ないと思った」
平沢は喉仏を動かした。
ちなみに彼女は特段虫が好きなわけではない。病気やケガにつながる事象の一環として、生物由来も把握しているだけ。
ただそれをどうやって説明しようか……その時。
「わ!」
諏訪君が声を上げて立ち止まった。
「どうしたの?」
「毛虫……」
「ドクガか!?」
平沢が正義の味方根性を出してくれ、諏訪君の前にサッと回ったが。
諏訪君の、入れ変わって平沢の目の前には、糸引いて宙にぶら下がる確かに毛虫一匹。ただ、その糸をたどるとサクラの梢から。
「ドクガじゃないと思うよ」
辰野君が歩いて行ってその糸をつまみ、ぶら下がった虫ごとツツジの向こうへポイ。
「あ、どうも……なんか、みんなに面倒掛けちゃって済みません」
諏訪君は恐縮した面持ちで頭を下げた。
「なんで?友達じゃん」
「え……」
諏訪君は目を見開き、彼女を見た。
自分の言葉が大変な衝撃を与えたと彼女は知る。『運動とか、全部一緒には遊べないけど、友達になってやって』……彼女に他人の過去を探る趣味はないが、強い衝撃の故に見えてしまった。
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