【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -7-
「悪いけど近づいてこないでね。全員。辰野、あんたもね。良く平気で近づくよね」
柴崎は捨て台詞を残して小走りに去った。
「しょうがねぇな……」
辰野君は頭をポリポリ掻いた。
「あいつ……なんつーか……“こうあるべき、あとはダメ”って感じでさ。何が気にくわないか知らんが気を悪くしないでくれな。諏訪君、相原さん」
「別に今更」
「ああ、うん。大丈夫だよ」
近づく用事など元よりない。彼女は行き過ぎた背中をあきれた目で見た。
「オレはこれがキモいんだってさ」
平沢は自らののど仏を上下させ、指さした。女の子が“男性”や“人間の持つ生物的・本能的側面”を不潔と感じて毛嫌いする事象はまま聞くが。
チト度が過ぎてはいまいか。
「まぁ、触らぬシバ神にたたりなしと言うことで」
辰野君は彼女の名前をインドの神様に引っかけてそう言った。なお、失礼な言動を神様に例えるのは神様に対して失礼なのでおすすめしない。
「あの、ぼく、この辺で……」
諏訪君が言い、交差点挟んだ高層マンションを指さす。
さすがにこれ以上ついて行く必要はないか。
翌朝、前日分かれた交差点に行ったら、諏訪君の叔父夫婦に揃って頭を下げられた。
叔父、叔母とは言えご高齢のようである。共に白髪であったり薄くであったり。叔父上は既に退職の身とか。
「送り迎えまでご一緒とかお気遣いありがとうございます」
叔母上が腰を折る。
「いえ、慣れない道でしょうし、人が少ない場所なので、体調不良を起こしたら大変ですし」
「本当は私どもで出来れば良いのですが、二人とも生憎足腰が……」
「お気になさらず。でも、ここは空気のいい土地ですし、雑木林の小道とかゆっくり巡られるのも良いかも知れません」
加齢で膝や腰は動きにくくなる。動くことが防止なのだが、動けなくなってしまうとそのための運動も出来ない。
「重ね重ねのお気遣いありがとうございます。“りーくん”に運動しろと言いつつ、我々がこの体たらくで情けない」
「ちょっとりーくんはやめてくれよ」
りーくん……諏訪利一郎君が恥ずかしそうに。幼い頃からそう呼ばれていたのだろう。
「りーくん」
「もー、相原さんまで!」
彼女は笑った。とはいえ、子供っぽくからかわれるのは傷つくであろうことは百も承知。
「姫ちゃんでいいよ。或いは、私のハンドルネームはレムリア」
「姫ちゃんはちょっとなぁ……レムリア?」
彼が興味を持ったことに彼女は気づいた。
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