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【理絵子の夜話】圏外 -09-

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「儲かりそうな路線ですね」
 理絵子は言った。普通に言うとイヤミだが、このちょっとおちゃらけた運転手なら大丈夫だろう。
「ああ、ここは元々金山の金を甲州街道に出す。それだけのために出来た道だからね。金鉱で寸止まりで、山向こうへ抜けてるわけでもなく、閉山で道だけ残った。鮎釣りしか能が無くなったから、鮎が下っちゃったら誰も来ないさ。最も、最近は夜になると、若者がクルマで来るらしいけどね」
「夜釣りですか?」
「なんかえっちい予感……」
「ハッテン場とか」
「違う違う。なんか有名らしいんだよ。心霊スポットって」
「え?」
 理絵子はピンと来た。
 予感、それだ。
「心霊スポット?」
「まじっすか?」
 女の子達が興味津々とばかり運転席に寄ってくる。過去現在を問わず、女の子は多くこの手の話が好きである。
 みんなで運転手を見つめる。無言の圧力“詳しく”。
「……オレ興味ないから詳しく知らないんだよ。何か悲劇らしいけどね。宿の人なら判るかも知れない」
「なんだつまんない」
「君ぃ。そういう沿線スポットの情報を詳しく説明できることが、乗客増加につながるのではないのかね?」
 ペットボトル片手の田島が言う。
「参っちゃうなどうも」
 運転手が苦笑する。
 と、穴ぼこか、それとも石か、何か段差を通過したらしく、バスがドシンと揺れた。
 ペットボトルの中身が跳ね、田島の顔にぴちゃっ。
「わう!」
 運転手がバスを止める。
「大丈夫かい?ケガした?」
「いいえ、でもメガネに“マックスコーヒー”が…あ~ん、べたべたになるよ~」
「んなもの入れてくるからでしょ」
 理絵子は言った。
 運転手は安堵の表情。
「ケガ無くて良かった。ちょっと見てきていいかな。パンクだといけない」
「はーい」
 運転手が降り、少女達が答える。
「マックスコーヒーって?」
 大倉が訊いた。
「千葉の辺りだけで販売の缶コーヒー。優子に一箱もらったん。そりゃもう何がマックスって……」

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(つづく)

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