【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -11-
「ごめん、諏訪君を窓際へ。救助を来させる」
この言葉に反応した級友があった。
去る3月、遠足で訪れた遊園地で首記した“救助”を目の当たりにした、同じ班だった娘達だ。
「姫ちゃん、救助って」
「お察しの通り。保健室で救急車待つとかまだるこしい。……その黒板の文字が何なのか後で聞かせて」
“その”を顎をくいっと傾けて示した刹那、テレパス一閃。
-レムリア!大丈夫ですか!状況は把握しました。船を下ろします。
その女(ひと)は、名……コールサインをセレネという。
「はい。お願いします」
声に出すが、出す必要は本来ない。ただ、変化が起きるという予告のためだ。
ドアが開いて担任の気配。
「ケンカと聞きました。どうし……」
瞠目したままその動きが止まった。
突如、轟と唸って風が舞い、教室の中を吹き抜けていろんな物をバサバサと飛ばす。
突如の暴風は悲鳴と恐怖を惹起する。窓から逃れる、焦って転ぶ級友も。
その風を吹き出す正体。窓の外に浮かぶ船体。
超高速救助ボランティア“アルゴ・ムーンライト・プロジェクト”が所有する飛行帆船アルゴ号。
風圧で中空に静止する。伴う暴風である。薄茶色の船体側壁が接近し、甲板高さが窓に合わされ。
大男が歩いてきて、大ぶりな木の板……生徒である彼らは跳び箱で使うジャンプ板を思い出した……を船体と窓枠の間に渡した。
金髪碧眼で、やや紅潮させたようにも見える顔色の男がニヤッと笑う。
コールサインを“アリスタルコス”。
「どうした」という英語。
「友人が喘息で強い発作を起こした。病院へ行く」
レムリアは諏訪君をおんぶする動作をしながら言った。風に向かう短い髪が暴れ放題。
「待った。この……船に運べばいいんだな」
背後からのそれは平沢。
「ええそう」
「任してくれ……なんかすげえな。映画みたいな」
平沢が諏訪君をおぶって、風圧に目を細めながら窓際へ歩く。
大男アリスタルコスがしゃがんで諏訪君を抱え上げる。
「身体を寝かさないように。腫れた気道が潰れるから」
「オーケイ」
片腕で抱きかかえ、レムリアが乗り込むのを待ち、空いた手で教室に渡した板を外す。
「どこへ……」
平沢が尋ねる。この状況でそれしか言葉が見つからなかった。そんな感じ。
「諏訪君が入院してた福島の病院。ありがとう。離れて。また暴風が吹きます。副長乗船しました。発進願います」
この間にアリスタルコスが耳栓装置PSCの新しい物をレムリアに渡した。
『了解』
セレネから声があり、ピン、と耳に甲高い電子音。
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