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【理絵子の夜話】圏外 -12-

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 閑話休題。実際、バスの行く手はそこから上り坂がきつくなり、道も狭く、カーブも急になった。
 軽薄そのものだった運転手だが、ハンドルさばきとギアチェンジを間断なく要求される区間とあって、顔つきが厳しくなった。前方に、そしてミラーに気を配り、バスを進めて行く。プロフェッショナルそのものである。
「こーゆーの見ちゃうとクラスの男子達ってガキだよね」
「エロさとタッパ(身長)だけはオトナだけどね」
「エロい。ほんっとエロい。イヤになるくらいエロい。死ねって位エロい。尻と乳ばっか見てんじゃねーよおめーら、みたいな」
「でもオヤジに聞いたらさ、その歳でエロくなかったらそれはそれで問題だと。男性本能が目覚めていないか欠如しておると」
「腐女子大好物か」
 田島が内股の姿勢を取り、右手の甲を左の頬に添えた。
「うん。でもってエロいはエロいで基本的に頭の中そればっかなんだって。だから、中学生で純粋な恋愛なんか無いものと思えと。『男子本懐の男子本懐たるは押し倒せ』」
「言い切り?」
「すごいオヤジさんだな」
「現にオレもそうだったと。いかに言葉巧みに誘い出して押し倒すか、そればかり考えていたってさ。だけど女の子は見透かすなぁとも」
「しかしそうすると何、中学生の男の子ってエロゲバか腐女子好物のどっちかってこと?」
「それで、『男女交際は二人きりにならないように』と生徒手帳にもございますわけですな」
「幻滅してきた」
 口さがない会話に理絵子は苦笑した。おたく少年土崎がエロゲバや腐女子大好物系には見えないし、別の男の子は、詩人の感性なのだろう、“風の音が聞こえるか?”と理絵子に訊いてきたことがある。男子すなわちエロゲバか腐女子大好物系と決めつけてしまうのは正直どうかと思う。
 運転手が咳払い。
「コホン。ハタチ過ぎて現役エロゲバよりご案内申し上げます。このバスは間もなく“旅荘塙(はなわ)”前に停車します。荷物は忘れても良いですが、運賃はしっかりと徴収しますのでご用意ください」
「はーい」(8人一斉)

(つづく)

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