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2019年7月 6日 (土)

【理絵子の夜話】圏外 -10-

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 理絵子の台詞のこの後は、書いてしまってはつまらないので書かない。興味ある方は調べて入手して頂きたい。ちなみに、優子とは理絵子のクラスメートにして友人の桜井優子(さくらいゆうこ)である。風体動作いずれもいわゆる“不良少女”であり、留年の2年生であることから、クラスでは疎外されている。しかし、であるがゆえに、理絵子は彼女と懇意にしている。マックスコーヒーは、優子の親戚が千葉に住んでいることに伴う。なお、あらかじめ申し上げておくが、本編に彼女は登場しない。
「綾が気に入ったって言うから半ダース上げました。で、今日ペットに入れて持ってきたと。綾、ちょっと大倉に飲ませてあげて」
「味確認するだけだよ」
 田島がペットボトルを差し出す。ゴクゴク飲まれないかと目を光らせながら。
 運転手が戻ってきた。
「今、『ぬお~』って断末魔のマンモスみたいな声が聞こえたけど」
「いえ、かわいいナウマン象の雄叫びです」
 大倉が応じる。ぬお~の当事者は彼女である。
「……なるほどマックスだわ。あんたが好きな理由、よく判る」
 大倉は驚愕の目でペットボトルを田島に戻した。
 運転手は無線で何か会社と話しをしている。
「あと1ダースあるわけです。消費が進まないわけです」
 理絵子は言った。
「え?だったらちょうだいよ~」
 と、田島。
「ダメです。理由を説明します。スマホをお開き下さい」
「え?あ、うん」
 理絵子に言われて、田島はポケットから取り出した。
「便利機能のメニューに電卓があるでしょ」
「……うん」
「体重の数値を入れるべし」
「え?あう」
 田島は数字が見えないように、手で隠しながら入力した。
「入れたよ。で?」
「身長何センチ?」
「155」
「では体重を1.55で割りましょう」
「割った」
「もう一回1.55で割りましょう」
「……割ったよ」
「25以上ならあなたはへこまなくてはなりません」
「何で?」
 そこで運転手が無線のマイクを所定に戻す。無線通信は終わったようだ。
 そして振り向きざま一言。
「肥満。だな。BMI25」
「びーえむあい?」
「走りそうな……」
 運転手は首を左右に振りながら続けて、
「そりゃBMW。BMIってのはボディ・マス・インデックス指数と言ってね。体重を身長で割ってるわけでしょ。答えの数字が大きいほど、身長の割に体重がでかいことになる。25以上なら肥満。会社でも24以下にせぇ言われてるからね。太い奴が乗るとそれだけ燃料を食うからって。我ながらせこい会社だよ」
 果たして田島は通路に座り込んだ。
「えーえーどうせ燃料消費少女ですよ。いいんだ。私なんか夕暮れの材木座(ざいもくざ)に裸足で座って、サーファー眺めながらひとりマックスコーヒー飲んでればいいんだ。彼氏も出来ず、みんなにデブデブと後ろ指を刺され、ほめられもせず、苦にもされず、サウイフモノニ、ワタシハナリタヒ」
 いじいじと通路に“の”の字を書く。ちなみに彼女が援用したのは、言うまでもなく宮澤賢治の“雨ニモ負ケズ”である。
「賢治は太ってません。むしろ1日に玄米4合と味噌と少しの野菜の食事を貴女にお勧めします」
「なんでいきなり湘南の海辺で千葉のコーヒー飲む設定なわけよ」
「そっちの方だと“マイコーヒー”ってのがあるらしいですよ。マックスとの対決をネットで見た気が……」
 若井が言った。
「はいはい発車しますから、ばばっちい椅子に座って下さいな」
 運転手がエンジンを掛けた。
「結局何だったんですか?」
「それが判らん。石もないし道に凹みもない。見て回った限り異常なしなんだよ。それでちょっと会社に指示をね。リコールとか車の欠陥でもなさそうだ。まぁいかんせん中古だからね。動かすよ」
 バスが走り出す。別段異常はないようだ。でも理絵子は心理的に引っかかった。
 心霊ネタを喋っている時に、起こったからだ。

(つづく)

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