【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -13-
女性の声。諏訪君が背中でぴくりと動き、主治医だったと判ずる。
『担当医師の小倉です。今どちらにお見えですか?』
「病院の真上です。降ります」
『はい。こちらも用意を……真上!?』
「ヘリコプターみたいなもんです。お願いします」
答えながらPSCのボタンを押す。これは船内通知用。許可が出たので下ろして。
セレネが答える。
『了解。屋上ヘリポート位置に降下……しますが、人がいます。滑空モードで降下します』
「構いません。滑空モードで」
滑空モード。レムリアはカメラ画像で屋上を見やった。車いすの子供さんとそれを押す付き添いの大人。
この船は国際レベルの機密だが、暴風は出せない。クローキング……すなわち光学迷彩で姿を隠す機能は持つが、滑空に必要な気流を遮断してしまう。
仕方がない。
甲板の前中後、3本配されたマストの帆を広げて風をはらむ。
水平に近い角度まで広げて船は空を滑る。1回旋回し、応じて影が屋上を横切り、屋上の二人が見上げる。
驚愕に極限まで見開かれた瞳。
船はわずかな音を立てて船底を病院屋上に付ける。帆を畳んで、船体の側面、海行く船なら喫水線の下に来る位置にある扉がスライドして開く。
見えているであろう金髪碧眼の大男におんぶされた男の子、その傍らには酸素ボンベとショルダーバッグを下げた女の子。
「驚かせてしまって申し訳ありません。小倉先生の了解をいただいて諏訪利一郎君の診察に伺いました」
テレパスが感知する。屋上に出る扉が開く。
車いすと付き添いの二人が呆然としているその奥、小屋のような部分で鉄の扉がギイと開いた。
風に揺れる桜色の着衣。結んだ髪が背後を流れる。
「信じられない」
「喘息の発作を起こしチアノーゼを呈しました。今はこれの“機動衛生ユニット”の呼吸器を付けています」
レムリアは大男と共に歩み寄りながら、これ……背後の船を指さした。なお、“機動衛生ユニット”は自衛隊が所有している航空機搭載型のミニ病院である。分かり易いと思いそう言っただけ。アルゴ号の場合“生命保持ユニット”と呼ぶ。
「あと、お願い出来ますか?」
半ば呆然としている小倉医師の目を見ながら、レムリアは言った。
「え。あ、はいはい。こちらへ」
スイッチが復帰したように小倉医師が身体の向きを反転させる。
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