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【理絵子の夜話】圏外 -17-

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 寝転がって訊いたのは窪川。
「圏外だよ」
「あ~じゃあ全滅だぁ」
 曰く、8人は電話会社も電波方式もバラバラだが、どれも圏外。
「だったら電池切っておいて方がいいよ。圏外の方が電池食うんだって」
 理絵子は言い、率先して切った。圏外だと、電話は電波を最大出力にし、接続可能な地上局を探す。従って、電波が繋がっている時より電力を食う。
 張り込みの多い父親から聞いた知恵だ。
「あ~あ。阪神速報見れない」
「何しに来たのキミは」
 と、階下で女将さんが柏手のように手をパンパン。
「姫君達、酒まんじゅう食べるかい?」
 ぐでっとしていた姫君達は瞬時に身体を起こした。
「はいっ!」(8人一斉)
「じゃあおいで」
「はいっ!」(同上)
 昇る時の3倍くらいの速度で階段を下りて行く。建物がビリビリ振動したが、彼女たちの名誉のために仔細な描写は控える。なお、酒まんじゅうは、この地方ではポピュラーなおやつである。
 食堂へ入る。テーブルに文字通りてんこ盛りにまんじゅうが積み上げられ、グラスに入った麦茶が用意されている。
 甘酒のそれに似たいい匂い。
「おいしそう~」
「朝がおにぎり一個じゃね」
「いただきま~す」
 どうぞと言われる前にぱくつく。この年頃の少女達に“しおらしさ”は無縁である。
「さてと。え~部長さんはどなた?」
 女将さんが訊いた。理絵子はまんじゅうをくわえたまま、右手を小さく挙げた。その仕草は可愛らしく、写真に撮っておけば絵になるだろうが、彼女は怒るだろう。
「一応お約束だからね。宿帳に学校名と代表者の名前を」
「ふぁい」(食べながら)。
「合宿だって?」
「ええ、物語を一つ作るんです」(飲み込んだ)
「あら素敵。どんなお話?」
「それがこれからなんです」
 宿帳に書きながら、理絵子は苦笑した。彼女が用意していたストーリーは純愛ものだが、バス内の会話のおかげですっかりその気は失せた。
 エロゲバだ腐女子大好物だというフレーズが頭に残った状態で、夕暮れの横浜港で初恋が……でもあるまい。
 その時。

(つづく)

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