【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -12-
アルゴ号は“光子ロケット”を動力とする。詳細は省くが本来は恒星系間航行用の亜光速宇宙船である。ただ、“燃料”である“陽電子”が容易に得られる段階ではなく、しかし速力が得られることから、全地球規模で活動する救助ボランティア船として運営している。
都内から福島県、諏訪君の入院していた病院まで数秒で達する。レムリアが病院へ電話する方が時間が掛かるほど。
「先に小児病棟でちょっとお手伝いさせていただいた相原姫子と申します。そちらに3月まで入院していた諏訪利一郎くんが喘息の発作を起こし、チアノーゼを呈しています。主治医の先生に取り次ぎをお願いしたいのですが」
『ちょっと待って下さい』
応対した女性はこう返した。レムリアの物言いは情報量が多すぎである。
『その諏訪……という方の診察券番号は判りますか?』
「大変な状態で聞き出せないからお願いしています」
なおこの間に船は病院の屋上、ヘリポートの位置に降りた。
『親族の方ですか?』
「友人です」
『東京へ……』
「その通りです。が、すぐ来られる位置で発作を起こしてしまったので連れてきました」
彼の制服胸ポケットに手を入れ、生徒手帳をペラペラめくる。緊急連絡先とか何か無いか。
が、新年度でありまっさら。
『申し訳ありませんが確認が取れないとなんとも……』
そりゃそうかもしれないが面倒くさい。
呼吸補助装置が警告ブザー。
『レムリア!』
反射的にセレネが呼んだ彼女の名前に、強く反応したのは電話の向こうであった。
『レムリア……ひょっとしてあの時の魔女さんですか!?』
魔女のレムリア……彼女は小児病棟や孤児院でマジックを披露する時そう名乗る。
「そうです。今、諏訪君と同じ学校に通っていて……」
および。
「……諏訪です。お久しぶりです……綾部(あやべ)さん」
諏訪君はそれだけどうにか口にして失神した。
慌ただしくなったのは電話の向こう。婦長か小倉(おぐら)先生は見えませんか?3月まで当院にいた諏訪君らしいです。あの時の魔女さんも一緒です。
受話器が手と手の間を渡る音。
『もしもし?』
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