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【理絵子の夜話】圏外 -16-

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 理絵子ははぐらかすようにポケットに手を伸ばした。女将さんが“御札に気付いた自分”に、敏感に反応したことがよく判った。アンタッチャブル、ということだろうか。
 とはいえ、到着の連絡を入れる必要があるのは確かである。折りたたまれたケータイをぱかっと開く。
“圏外”。この山奥では仕方がないか。
「あ、ここは携帯電話だめよ。その電話使って」
「あ、はい。お邪魔します」
 靴を脱ぎ、女将さんに渡し、上がり込む。
 すうっと温度が下がるのを感じる。“御札”より奥へ入ったからだ。
“涼しい領域”がこの宿…家の中に構築されていることが判る。ついでに言うと、涼しい領域は、この宿を囲む形で存在しているようだ。知識として、まず間違いなく、お札は五芒星(ペンタグラム)を描くように配置され、その描く五角形の内側の領域は温度が低い。
 結界、すなわち霊的なパワーの侵入を防止するシールドバリアである。この宿が、何らかのそれ系攻撃に晒されているか、晒された過去がある証左だ。女将さんが触れられたくないと思う理由もその辺だろうか。
 風が吹き込む。沢風の気まぐれといえば涼を呼ぶ表現であるが、結界に気づいた理絵子への、何者かからの応答と書いた方が、この場合は恐らく正しい。彼女が義か賊か探っている、そんな感じ。
 理絵子は電話脇に10円玉を置いて、顧問へ電話した。通話10秒。
「りえぼー。こっち」
 階段上から田島が顔を出す。
「何か言われた?」
「ごくろー。がんばれ。以上」
「あそ」
 階段を上がって行く。上がってすぐの鴨居下に神棚が配置されている。1階のお札が描く五芒星の領域は、そのまま五角柱の結界として上方へ延伸しており、この神棚の位置までが作用範囲。
「この6畳とそっちの8畳使っていいって」
 田島が指差す続きの二部屋では、座卓が4台くっつけられ、作業エリアが出来ている。そして、さすがに早朝からの長旅がこたえたか、女の子達がてんでにぐでっとしている。
 荷を降ろす。
「りえ部長。ケータイつながります?」

(つづく)

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