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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -14-

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 その時。
「あなたってアトレーユなの?」
 可愛らしい声が傍らから発せられた。
 レムリアは立ち止まり、声の主のたる車いすの女の子に目を向けた。
「ゆみちゃん、お姉さんは忙しいのよ」
 車いすを押している女性が軽くたしなめる。だが、レムリアは諏訪君を医師と大男に任せ、女の子前で膝を折った。
 アトレーユ。長編ファンタジーで知られる“ネバーエンディングストリー”の主人公である。
 実は空飛ぶ船を見られたことが過去何度かある。その場合、大体の反応は“ピーターパン”であった。それならネバーランドだが。勘違い?
「ドラゴン、あの子連れてどっか行っちゃうよ?」
「ゆみさん、失礼ですよ……ごめんなさい。あの、先生の所へ行かれて下さい。この子は……」
 女の子の言葉と付き添いの方から判ることは二つ。
 女の子は良く本を読む。そして、この種の発言を“失礼”とは思わず繰り返している(繰り返してしまう)。
 その結果、多分、女の子の本質に対して様々な誤解を生んできた。
 すると?自分が男の子に見える?
「男の子に見える?」
 レムリアは自分を指さして聞いてみた。
「うん。おっぱいないじゃん」
「これ!」
 付き添いの女性はたしなめるが。
 イコール、付き添いの方にもそう見える。
「あっはっは……」
「あとね、強いから。絶対に信じてるから。ヒーローのように」
 それはレムリアの苦笑を真顔に戻させることになった。確かに、“とりあえず逃げる”という心理は芽生えたことがない。それら情動と、諸々の“女の子らしくない”部分が男の子のように感ぜられたか。
 否、自分は真の困難に出くわしたことが無いのかも知れぬ。
「私、歩けないんだ」
 女の子は唐突に言った。
 その足に目をやると細っこく、応じた筋肉がついていないと判る。
「頭もおかしいって」
「これ!」
 付き添いの方はそうやって幾度この子をたしなめてきたのであろうか。

(つづく)

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