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【理絵子の夜話】圏外 -22-

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 仕方ない。理絵子はストーリー製作の手がかりになれば、くらいの気持ちで、考えてきたあらすじを披露した。
「あのね」
 病弱な女の子が、療養を兼ねて田舎の学校に転校する。そこにいた男の子は、幼い頃将来を誓い合った近所の子だった。
 二人は恋に落ちる。しかし甲子園を夢見る彼は、遠い高校へ行くことに。二人は再び将来を誓い合うが、2度目の再会は訪れないことを暗示して、物語は終わる。
「暗い!」
 田島が一刀両断。
「でも……ときめいて、想い通じて、感動して、涙して、ラブストーリーに必要な要素は全て入ってるな」
「感動しました部長」
 若井が涙目。
「恋愛物お得パッケージになってるのは確かではあるね」
「抱き合わせでエロゲバとアッー!を」
「やめんか」
「だけどラブストーリーって一話完結には向いてますよ。出会いと別れがあるから」
「じゃぁこれをラブコメに改造するか」
 待てコラ。
「まずエンディング。女の子殺すんじゃなくて男の子の方をどうにかする」
「交通事故」
「却下。唐突だしステレオタイプ。いかにもご都合主義っぽくて、“ああやっぱり中学生だな”になっちゃう。それでは面白くない」
「ではアッー!を取り入れて新宿二丁目」
 補足説明。ゲイバーが多い。
「それ行こう。ぜってーあり得ねー位でちょうどいいんだよ。でもそうすると野球アッー!ってのもありきたりだな」
「ありきたりか?」
「甲子園目指して、は、ありがちってこと」
「じゃぁお笑い目指して大阪」
「採用」
「でもそうするとエースに育って行く彼と、彼のカノジョであることに対する周囲のやっかみの処置は?」
「落研(おちけん)にすればいいじゃん。そんで生徒会長になるんだよ。爆笑生徒会長で人気者」
 田島が言った。ちなみに、落研とは落語研究部のことである。
「スランプに陥って炎天下一人練習、熱射病で献身介護のエピソードは?」
「ドリアン早食い大会でお腹壊して彼女が代理落語」
「それだったら闇鍋の方が良くないすか?スリッパとか」
「闇鍋はいいが、“スリッパを食う”という設定に無理がある。いくら闇鍋でもあんな物噛み切れないだろう。確実に間違えて食べてしまって、確実に腹をこわすものでなくちゃ」
「ヘビ」
「かえって健康増進になりそう、却下」
「ゴキブリ」
「無害だと保健所のホームページに……」
「マジかよ」
「ああ、そういうの実際食べて調べるらしいよ」
「カタツムリ」
「寄生虫マジ死ぬからやりすぎ」
「んじゃミミズ」
「それで行こう」
「真剣な議論が続いております」
「どこがじゃ」
「闇鍋なら、真夏の我慢大会ってことにすれば、季節設定変えなくて済みますね」
「いいこと言うね。汗くさい男達って雰囲気も維持出来る」
「さわやかだなぁ」
「しょっぱすっぱ」
「やめい!。でもそうするとクライマックスどうする?彼がとっておきの魔球を披露して大会で優勝。落語じゃ感動クライマックスがない」
「う~ん」
 議論(?)はそこで詰まってしまった。

つづく

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