【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -17-
「わぁ」
「あらすごい」
それはゆみちゃんと医師の感嘆。
ただ、この男の子にあめ玉をあげるのは困難。
あめ玉を両の手で包む。開くとずんぐりむっくりにデフォルメされたおもちゃの電車。
「701系とか」
それは東北地方を走る電車の型式。
男の子に変化が生じる。それは電車を見ようとし、手にしようとする動き。
「大丈夫。はいどうぞ」
横たわる男の子の枕元、視界に電車を置く。
男の子の表情筋が動く。弛緩が見え、笑みを作ろうとしていると判る。
「良かった。じゃぁまたね。みんなの所を回るんだ。短くてごめんね」
手を振りバイバイ。
「ではお隣へ……どうされました先生?」
レムリアが隣室への案内を求めて医師を見上げると、医師は刮目、といった表情で見返していた。
「先生?」
「ああ、ごめんなさい。りきと君は電車好きだったんだ。どこで?」
初対面のはずなのに電車好きと知っている。そこに驚いたらしい。
「いえ、フィアンセの曰く男の子は電車かクルマ出せば間違いないとか」
握る、開く、あめ玉。握る、開く、電車。握る、開く、ミニカー。
「なるほど……」
それは嘘では無いが、レムリアは全容を言ってはいない。
医師は左手首の腕時計を見やり、
「来れそうにない子は24人。諏訪君は気道拡張の処置中。昼休みには間に合うと思う」
「じゃ、みんな回りましょう」
個室を回って行く。お菓子が大丈夫ならお菓子だし、男の子は乗り物。女の子は。
アニメキャラクタのキーホルダー、携帯機器用のストラップ。
「作ったの?」
「いえ、市販品。東京駅にこういうの扱うお店が集まってるんです」
「高いんじゃないの?こういうキャラクター商品って」
「フィアンセにたかってますので」
と、左手の袖口をくいくい引っ張る手指有り。
ゆみちゃん。
「ん?」
「どうやってるの?」
手品の種を教えろ。
「そりゃ企業秘密ですぜ」
レムリアは口の端でニヤリと“魔女の微笑み”を作り、首を左右に振った。
「私も魔女になって何かしてあげたい。いつもされるばっかり」
そう言われると降参である。レムリアは天使の笑顔を作った。
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