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【理絵子の夜話】圏外 -24-

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「破壊と創造。ブレイクアンドデストロイ」
「壊して壊しまくってどうすんの!」
「でもこうやってるとアレですね。教科書に書いてあった“作文の作り方”って嘘ですね」
 窪川が言った。
「そりゃそうさ。マニュアル通りに物語創れりゃみんなマンガ家小説家だよ」
「あらすじ作って肉付けなんてかったるいことやってられっか」
「でも私たち部長さんのお話に肉付けして作ってる気が」
「ちがう。骨がない!」
「骨抜きにしたのどいつらよ」
 7人一斉挙手。理絵子は脱力。
「くすん。いいけどさ。あのね窪川。私が思うに、教科書の書き方には肝心なことが抜けてる」
「えっ?」
「手順はどうでもいい。楽しく創る。ってね」
「……なるほど」
「おいしいとこ持って行かれたぜ」
「部長ですから」
 理絵子はちょっと澄まして言った。ちなみに、彼女たちはここで“自由な発想を求め、次第に収斂させて行く”という手法を取ったわけだが、これはビジネスの世界で“ブレインストーミング(brain storming)”と呼ばれる、確立された立派な発想・創造手法である。興味ある方は多くのビジネス向け書物が出ているので参考にされたい。
 勝手口がノックされ、ドアが開いた。

 女将さんではない。男性。ランニングシャツにねじり鉢巻き、肩の上には木のタライ。
「おう、よく来たね」
 ここの主人氏である。
「おじゃましてま~す」
「ごめんよ。お客様がいらっしゃるのに主人が留守して。急に町内会の会合があってな」
 主人氏は言うと、肩のタライをドンと降ろした。
 中はかち割り氷。
「お昼は流しそうめん」
 8人から拍手喝采。
「……元気いいなぁ」
「それしか取り柄ありませんから」
「私、脱いでもひどいんです」
「ちっ、先に言われた」
「争うところが違うだろ」
 主人氏は大笑い。

(つづく)

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