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【理絵子の夜話】圏外 -23-

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 2分。
「優勝に対抗出来るのは爆笑だ」
 田島。
「韻を踏んでいるかどうかの問題じゃ……」
 そこまで来て、理絵子は折れた。
「いや、爆笑で感動って設定、できる」
 半分あきれながら、理絵子は言った。
 もう、いい。出会い、ときめき、別れ、涙。いかにも中学生が考えそうなトゥルーラブストーリー。
 私の考えた物語。横浜までロケハンして、せっかく考えてきたけど、このメンバーじゃ、無理。自由に発想させた私がお馬鹿さん(いつか自分で書く)。
「あのね、老人ホームというか、お年寄りの介護施設で一席打つの。頑固で全然笑わなかった、身寄りのないお年寄りが、ニッコリ笑って大団円」
 お~、とメンバーから感嘆の声。
「素晴らしい。落語でお年寄りなら無理がない」
「高齢化社会という問題提起も入ってるわけですな」
「高尚だなぁ」
「じゃぁ筋立て直そうか。コンテ描こう。文字でゴチャゴチャ書くより、印象深いシーンのイメージをサッと絵にして並べた方がいい」
「あ、でもそうなると“女の子が男の子を好きになる”きっかけどうするの?」
「どうする作者」
「誰がじゃ。ん~……それじゃあその女の子は、厳格な家の育ちって事にしようか。転入生歓迎会の一席で、彼女の家にない“笑い”に触れてホロリ」
「なるほど~」
「そうすると何、私たちがこれから紡ぎ出す作品は、読み手を爆笑させながら、しかし私たち世代に起こりうる家庭教育問題と、将来社会に出て直面する高齢化問題との両方を盛り込むという、極めて高度な作品ということになるわけですね!」
「竹下落ち着け。ぜってー校長賞はありえねー。凝りに凝りまくって大人社会を茶化すんだから。逆に言うと校長賞なんか取っちゃあならねぇ。そういうのは生徒には受けねー。クラシック作曲家の顔は落書きのベース。修学旅行の寺はただ数こなすだけ。違うか?」
「そうそう。狙うのはただ一つ“ウケ”だ。それを忘れちゃなんね」
「ようし固まった」
「絵は私たちが起こすからりえぼー小説書け」
「え~っ?」
「原作者でしょ」
「もう全然違うじゃん」
「どこが。輪郭と髪型と眉と目と耳と鼻と口変えたみたいなもんじゃん」
「何も残ってないじゃん」
「絵は集団で描けるけど文章は一人で書かないと文体が変わるんだよ」
「そう、変態するの。ア……」
「………ーッ!ネタはもう結構!しくしく。自分で創った話自分で壊すのね」

(つづく)

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