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2019年11月13日 (水)

【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -19-

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 肩で息をし、声が紡げない。相当慌てたと見える。
「……ああ、良かった。びっくりした……」
「ごめんなさい。その、相原さんの手品見逃したくないなって。それから、みわちゃん、どんな。前はこんな」
 諏訪君の質問に医師が頷いた。
「伊藤さん、叱っておくから戻っていいです。……みわちゃんは骨髄移植をしました。姫さんにはCMLと言えば判りますね」
 レムリアは納得した。みわちゃんは透明ビニールシートで覆われ、それは無菌シート。更に呼吸補助装置をはじめ、数々の機器とチューブや電線でつながれている。
 CML:chronic myelogenous leukemia……慢性骨髄性白血病。日本語の字面を嫌ってロイケミアと呼ぶ向きもある。
「今は、眠っています」
 医師は小さく告げた。
「無理矢理起こすのは可哀想だよ」
 レムリアは言った。とはいえ、薬による眠りであるから、起こすという選択肢は存在しない。
「みわちゃんだけ後で、じゃだめ?」
 レムリアは小首を傾げて尋ねたが。
「いつも、みんなと一緒じゃないんだよ。一度くらいみんなと……」
 ゆみちゃんはだだをこねるように言った。
 一緒じゃない。それは、感染症防止のため、が趣旨だとレムリアは理解している。
 ただ、それは、そばにいるのに接触出来ないという状況を作る。
「魔法を使いますかね」
「えっ?」
 驚く声は同時複数。
 レムリアは手のひらを握り、ひらく。
 毛糸のリング。真珠を模した白い球が2つ。
「ミサンガ」
「あら懐かしい」
 それは医師と看護師。これをおまじないとして手首に付けるのが流行ったのは1990年代。
 レムリアは片方を握り、無菌シート越しにみわちゃんの手首を握り、手を開いた。
 シートを越えてみわちゃんの手首にミサンガが装着される。
「どうやって……」
 手首に通したわけでも、解いて結んだわけでもない。
 シートもめくらず。
「手品ですから。まぁ細かいことは気になさらず……こっちはゆみちゃんが付けて」
 同じく握って開けばこちらもミサンガ装着完了。

(つづく)

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