【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -19-
肩で息をし、声が紡げない。相当慌てたと見える。
「……ああ、良かった。びっくりした……」
「ごめんなさい。その、相原さんの手品見逃したくないなって。それから、みわちゃん、どんな。前はこんな」
諏訪君の質問に医師が頷いた。
「伊藤さん、叱っておくから戻っていいです。……みわちゃんは骨髄移植をしました。姫さんにはCMLと言えば判りますね」
レムリアは納得した。みわちゃんは透明ビニールシートで覆われ、それは無菌シート。更に呼吸補助装置をはじめ、数々の機器とチューブや電線でつながれている。
CML:chronic myelogenous leukemia……慢性骨髄性白血病。日本語の字面を嫌ってロイケミアと呼ぶ向きもある。
「今は、眠っています」
医師は小さく告げた。
「無理矢理起こすのは可哀想だよ」
レムリアは言った。とはいえ、薬による眠りであるから、起こすという選択肢は存在しない。
「みわちゃんだけ後で、じゃだめ?」
レムリアは小首を傾げて尋ねたが。
「いつも、みんなと一緒じゃないんだよ。一度くらいみんなと……」
ゆみちゃんはだだをこねるように言った。
一緒じゃない。それは、感染症防止のため、が趣旨だとレムリアは理解している。
ただ、それは、そばにいるのに接触出来ないという状況を作る。
「魔法を使いますかね」
「えっ?」
驚く声は同時複数。
レムリアは手のひらを握り、ひらく。
毛糸のリング。真珠を模した白い球が2つ。
「ミサンガ」
「あら懐かしい」
それは医師と看護師。これをおまじないとして手首に付けるのが流行ったのは1990年代。
レムリアは片方を握り、無菌シート越しにみわちゃんの手首を握り、手を開いた。
シートを越えてみわちゃんの手首にミサンガが装着される。
「どうやって……」
手首に通したわけでも、解いて結んだわけでもない。
シートもめくらず。
「手品ですから。まぁ細かいことは気になさらず……こっちはゆみちゃんが付けて」
同じく握って開けばこちらもミサンガ装着完了。
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