« 【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -20- | トップページ | 【理絵子の夜話】圏外 -32- »

【理絵子の夜話】圏外 -31-

←前へ次へ→

「ああ腹立つ。こうしてやる」
主人氏が玄関先に塩をぱっぱ。
「どう?率直。向坂さんの印象」
女将さんが訊いた。
「私なら“さん”付けで呼びません」
理絵子は言った。見知った修験者みたいな厳しさと謙虚さはカケラもない。
形ばっかり。
「……そうか。私でもヤだもんね。年頃の女の子だと尚ヤだよね」
女性は本能として“危険な男”を察知する能力を持っている。女将さんが言っているのはそれである。
主人氏が愚痴る。
「なんかそぐわないんだよ。急にフラッと来て、ああせぇこうせぇと。この土地は呪われているってな。過去が過去だろ。過疎化が進んで人も減って来てたし、地区じゅうの年寄りがビビりあがっちまってな。先生先生って崇め奉ってるけど、オレにはそうは見えねぇ。嬢ちゃんの方がよっぽど凛として巫女らしいわ」
「……恐れ入ります」
理絵子は照れながら言った。多分、高天原では神々が爆笑しているであろう。いや、八百万の神々は“爆笑”なんてハシタナイことはしないか。
女将さんが安堵の表情。
「さ、堅苦しいのはおしまい。ちょっとの間だけどさ。川に行っておいで。水が綺麗なことぐらいしか売り物無いけどね。せっかくだし。あ、帽子忘れないでね。涼しくても太陽の光まで弱いわけじゃないから」
「はーい」
理絵子は荷物の中から麦わら帽子を取り出した。
「そういえば行っちゃいけないのは……」
「目安はワサビのところ。野生のワサビ見たことある?ってまぁ、今日はそれこそ踏み荒らされてるからね。すぐ判るよ。そこより奥はNG」
「判りました」
理絵子は帽子をかぶった。
宿の裏口からサンダル履きで川へ降りて行く。川と言っても沢に近い。水は少なく、足首ほどもない。
程なく、少し上流の方に遊ぶ、仲間達の姿が見えた。
「りえぼー」
仲間達が自分を発見し、手を挙げて応える。
「どうだった?」
「あんたらだったら、逃げる」

(つづく)

|

« 【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -20- | トップページ | 【理絵子の夜話】圏外 -32- »

小説」カテゴリの記事

理絵子のスケッチ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -20- | トップページ | 【理絵子の夜話】圏外 -32- »