【理絵子の夜話】圏外 -36-
作業に入る。最も苦労すると見られたストーリー作りが午前中で終わったため、具体的な作画、および理絵子は文章の作成を行う。服装がどうの、背景がどうの、絵と文章の一致を図りながら作業を進める。特段脱線するでもなく、夕刻を迎える。
和服のサンプルが欲しい。何せ落語。
「おばちゃん」
田島が頼み、女将さんに用意してもらったのは。
浴衣及び巫女の装束。
「随分古そうな…」
「おばあちゃんが着てたものだもん。それこそ供養のためよ。昔は各家持ち回りで巫女やってね。こだわる理由はその辺にもあり」
女将さんの説明。
「へぇ~」
そこへ主人氏が上がってきた。
「何オンナだけで盛り上がって……こらまた随分古いの出してきたな」
巫女装束を持つ。
「そうな。昔は女の子これ着させてなぁ……」
主人氏はそこで理絵子を見た。
理絵子は目を剥いた。
『よっぽど凛として巫女らしい』
まさか。
「着てみ」
「えっ?」
「あ、面白そう」
「似合う似合う。髪長いし」
「お清めも受けたことだし」
7人が理絵子ににじり寄る。
「ちょ……ま……貴様らっ!」
理絵子は超感覚能力者(エスパー)と言って過言ではないが、念動力保有者(サイコキノ)ではない。
7人相手では抵抗する術もなく、ジーンズとTシャツの上からではあるが、巫女装束を着せられた。
巫女理絵子。
「すっげー」(7人一斉)
「そーお?」
理絵子は自分を見回した、着ている中からでは外観の判断付かない。
「写メ写メ」
中井がカバンをゴソゴソし、ケータイのカメラで激写される。
「どうよ」
見せられる。サイズ的にはちょうどいいらしい。
「ほえ~……」
女将さんが感心したように上から下まで見回した。
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