【理絵子の夜話】圏外 -38-
「いやぁいいなぁ、女の子ばっか」
「おじさん露骨に鼻の下伸びてるよ」
「そうかい?。あ、そうだ、さっきの巫女ちゃん写真、オレのケータイに転送してくれよ」
お構いなし。この時、エロゲバという言葉を何人が想起したかは定かではない。
深夜。
「りえぼ、りえぼーってば」
しきりに揺さぶられて、理絵子は目覚めた。
問うまでもなく、異変が生じているのだと判る。
「どうしたん……」
コーンという、石と石がぶつかる音。
「今の?」
「うん、竹下が気持ち悪いって言ってさぁ」
「部長~」
起きているのはその竹下と大倉である。
「女将さんと……」
主人氏は?と理絵子は訊こうとし、階下からの大いびきに気づく。女の子集団にデレデレの主人氏は、ピッチ良く日本酒をあおりデロデロ。女将さんも彼女たちのあまりのノリの良さに、“身内が来たみたいだ”とお気楽モードに入ってやはりデロデロ。
理絵子は気づいた。また傍若無人な者共が塚を壊しに来たのではないか。
テレパシーで探ろうとする。しかし、あいにくと結界の中では感度が悪い。
「見に行く?」
「えっ?」
大倉が目を剥く。理絵子は立ち上がり、川に向いた側の窓を開けにかかる。
建て付けが悪い。
ドンガン窓を叩いているうちに田島が起き出した。
「うるさい~」
「あ、ごめん、窓開けたいんだけど」
「それコツがいるんだよ」
田島が身体を起こす。
が、半分寝ぼけていたのか、メガネを外していたせいか、隣の窪川に蹴躓き、仲間達の上に倒れ込んだ。
「……!」
田島の(迫力ある)ボディアタックと、それを食らったメンバーの悲鳴とで、結局は全員が起きてしまう。
「深夜戦なんて聞いてね~」
「窪川ギブアップであります」
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