【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -25-
メリディオナリスがステッキを縮めようとして首を傾げる。
「これおもちゃの奴じゃなかったの?」
「え?どういうこと?」
大魔王諏訪君が首を傾げ、ステッキを受け取り、手にして見回す。軸を指で弾く。キンという金属質の固い音。
プレゼンテーションでよく見る“指し棒と”同じ仕組みの伸縮機構。
「トップジュエルも……水晶みたいだ。相原さん作ったの?」
レムリアは気がついた。
ただ一つ強く思うこと……メリディオナリスゆみちゃんの思いが形を成したのだ。すなわち、みわちゃんにこのマンガのヒロインをやらせてあげたい。
おもちゃが本物の質感を備えた。
「ダイヤじゃ無くて水晶だけどね」
レムリアはそれだけ言った。
「みわちゃんにプレゼントしてあげて下さい。そして彼女が目を開いたなら、助けてあげる側になってあげてと伝えて下さい」
「うん」
ゆみちゃんに戻す。ゆみちゃんはステッキを縮めて戻し……この動作に合わせて病院パジャマ姿に戻っているのだがそれは気にせず……ハッとした表情で顔を上げた。
「それって……もうお別れ?」
「また来るから」
「嘘」
ゆみちゃんは即座に返した。ややつり上がったまなじりが怒りの意図を表する。
嘘の二文字に込められた重さを思う。「また」が「ない」子もいる。
軽々に過ぎる。
「結局アンタも雑魚い大人と一緒なんだね。口先ばかり。東京からそう簡単に来られるもんか。おためごかしは嫌いだよ」
レムリアはこの間背後に回ったウェストポーチに手を入れ、衛星携帯電話をポチポチ。
「簡単に来られると言ったら?」
ゆみちゃんは一瞬怒気を孕み、しかし次の瞬間、驚愕に双眸を見開いた。
レムリアの背後、窓の外に構造物が上から降りてくる。
船の構造を持つもの。甲板の柵を掴む大柄な男が一人。
「帰るよ諏訪君。後ろ開けて」
「後ろ?……これは」
諏訪君の動作が止まる。
「光子ロケットと言ってあなたは理解出来ると思う。超高速飛行帆船アルゴ号」
レムリアはきびすを返し、窓を開き、身を乗り出し飛び移り、大男と二人でスロープを病院の窓に渡した。
「諏訪君ここへ。……じゃあまたね、ゆみちゃん」
彼が乗り込むのを待ち、ウィンク一つと両手でピース。
「私の本当のことを知る人は私のことをレムリアと呼ぶんだ。操舵室。搭乗完了。私の学校へ全速前進」
矢のような光が一閃、南南西の空へ向かった。
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