【理絵子の夜話】圏外 -41-
仲間達がようやく騒ぎに気づき出す頃、理絵子は一足早く座して待ち受けた。
階段下から次第に見えてくる、昨日と同じ平安装束、衣冠束帯。
「お前ら……」
「待ちなさい!」
理絵子は一喝した。
凛とした声が冴え渡る。
想定外の応対に、某が神棚の前で足を止め、目を剥いた。
「女子の寝室に勝手に入り込むことは、いくら神職でもお断りします」
「なにっ?」
「昨晩私たちは徹夜でクラブ活動の作業をしていました。仲間達を寝かせたい。御用がございましたら、わたくしがここで伺います」
理絵子は某の目をまっすぐ見て言った。背後で仲間達も半眠半覚醒でこちらに耳を向けている。こう大声でやり合っていては、寝ていろと言う方がまぁ無理である。
気付く。もし、塚の悶絶人がこいつである旨仲間に話していたら、仲間達はそれを想起したであろう。そして、それを某に見抜かれたであろう。
某が唇の端でニタッと笑った。
「徹夜でクラブ活動てか」
「ええ」
「恐怖クラブか?夜半に塚まで行ったであろうが」
「は?」
この発言に切れたのは主人氏。
「拝み屋!言うに事欠いて何を!」
「おじさま待って。……向坂さん。何故私たちが塚まで行ったと?」
「また壊されておる。昨晩地区にいた若者といえばおのれらしかおらぬ」
「私どもが塚を壊したと」
「そうだ」
「塚は土盛りですよね」
「その通りだ」
「では、私どもの靴を調べてみてください。いいえ、器物損壊の容疑で警察を呼んで頂いて結構。靴に残った土の成分や、靴跡の照合で、非が私たちにあるか判るはずです」
理絵子は言った。
実際問題行ってはいないのである。説得力のある反論を用意出来るとは思わない。
果たして某は黙り込んだ。
ダメ押し。
「私の父は警察官です。こちらの地元の鑑識に依頼することも出来ますが?」
「きさま……」
ギリっと歯を噛み鳴らす。よほど口惜しいと見える。
理絵子は某をまっすぐ見据える。追い込まれたこの男はどうする?何か“力”を使うか?
その時。
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