【理絵子の夜話】圏外 -44-
で、あるならば。
「いーや。推定有罪でしょ。逆に言うと、天下御免で塚まで入れる」
理絵子は言った。
「は?」
「りえぼーそれどういう」
「こうなった以上、私たちが塚に立ち入ったところで、最早当たり前ってこと。そこを逆手に取る」
7人はお互いを見合ってちょっと考えた。
それはすなわち。
「塚へ行く?」(7人一斉)
理絵子は頷いた。
「え、でも、それって」
心配の内容、幽霊さんが出るのでは。
「大丈夫。向坂が荒らして何ともないのを私たちは見た。むしろ冒涜しているのは向坂の方。塚って仮でも彼女たちの墓よ。ここの土地の人たちが過去を謝罪し、せめても安らかにって願いを込めたモニュメントよ。それ使って人欺して金儲けってこれどうよ」
「部長迫力ある……」
「今、あの塚に正々堂々と入れるのは私たちだけなわけ。どうせあいつは今夜も来るよ。お金せびり取るには、私たちという犯人が必要だからね。ちょうどいい。そこで渡り合おうじゃない」
「でもおばあちゃんが」
田島が眉根を曇らせる。
「大丈夫」
理絵子はスパッと言った。
「そ、その自信はどこから……」
「ご理解頂くようにお話しするよ。今大丈夫かな」
と、階下で女将さんの声。
「おばあちゃん階段はちょっと……」
おばあちゃんが寝床から起き出した上、2階へ上がってこようとしているようである。
「こちらから参ります」
理絵子は言った。
階段を下りる。
おばあちゃんと目を合わす。表情は穏和だ。お歳だが、聴力の衰えはないという話なので、自分たちの話は十二分に聞こえていたと思う。
「お聞きになった通りです」
理絵子は単刀直入に言った。
おばあちゃんは静かに頷く。
「あんたがそう言うなら、そうだろうよ」
意外な返事である。更におばあちゃんは一呼吸置いて。
「あんたは、普通の子と少し違う。あんたが巫女装束を着ているのを見せてもらった。まるで昔を見ているような気がした。卑弥呼や壱与(とよ)の御姿(おんすがた)をあんたを通して見た気がしたよ。あんたなら、いや、あんただからこそ、出来るのかも知れない。あんたは遣わされたんだ。あたしゃそう思う。おん、まいたれいや、そわか……」
おばあちゃんは一気に言うと、幻の何かを見つけたように、理絵子に向かって震える両の腕を伸ばした。
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