【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -27-
相原は言うと、一旦公園内の四阿に立ち寄って銀色のアタッシェ・ケースを手に取りぶら下げ、学校へ向かい歩き出した。
距離200メートルほど。程なくし、校門を飛び出してくる何人かの姿。ジャージ姿にホイッスルをぶら下げた学年主任の体育教諭、クラスメートたち。
「おーい。大丈夫か……そちらは?」
学年主任がが走る速度を緩め、相原を見る。
「相原学……姫子の兄のようなモノです。母親が手を離せないので参りました」
「ああ、そうですか、わざわざ済みません。担任の奈良井ですが、今……」
「どこぞの親御さんに噛みつかれていると伺っております」
「ええ……はぁ、まあ」
「クラスで説明しますわ。こちらお収め下さい」
相原学はケースを一旦足下にゴトリと置き、名刺を差し出して渡した。
「鎌倉宇宙機……ああ、人工衛星とかの」
「そうです。放射線測定器なんかもやってますので、まぁ、保護者様に誤謬である旨の説明はできるかと」
連れだって校門をくぐると、物凄い勢いで飛び出してくる“おばさん”あり。
「近づくな放射能!」
それは諏訪君らに「近づくな」と言い放った柴崎綾乃の母親であった。傍らに当の柴崎綾乃が立って睥睨している。
これでレムリアは事態をようやく掌握した。原発事故の起こった福島にちなむ全てを“放射線被曝汚染物”と定義し、忌避しているのだ。類例の典型が原爆被害者を罵った“ピカ”と関連付ける物言いだ。原爆がピカッと光ってドンと爆発した……という表現に基づく。広島と福島という語呂まで合わせた悪質な“駄洒落”である。
「私の家族と友人に何か」
相原学は防空識別圏とでも言うべき距離を置いて問うた。
「話しかけるな。出て行け!」
ケンカを売るおばさん。
「理由をご教示いただきたく。家族友人を侮辱する意味なら聞き捨てなりません」
「ガンがうつるからに決まってるでしょ!」
「悪性新生物とひっくるめて呼ばれる病気のガンのことですか?」
「そうよ!」
「ガンはうつりませんし、ここにガンを患う者は一人もおりませんが」
「違った。放射能よ。放射能が移ってガンになるのよ。いちいちうるさいわね早く出て行きなさいよ」
すると、
「お断りします。帰ってきたので」
レムリアが呆れたように言い、諏訪君の手を引いて歩き出す。
「あ、あ、あ」
おばさんが二人を押し戻すように両の手を広げながら後ずさり。
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