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【理絵子の夜話】圏外 -46-

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「あのね」
 理絵子は言いながら脱力した。確かに意味はそうかも知れないし、『あいるびーばっく』と言いもした。
「でも、そういうことでそ?」
「サイボーグか私は」
「あれの“まごの手”大阪で売ってるんだよ。メカメカしいまごの手に私は惚れた」
「うちには“まりも”まごの手と、ほれ、アニメの黒毛玉、あれのまごの手あるよ。どう見ても色を……以下自粛」
「それ言ったら“どこどこへ来ています”ってお菓子も、製造元は……以下自粛」
「何かそれ系のくだらないエピソード話に入れられないかなぁ」
「あ、それいいね。双方田舎があって、それぞれ買ってくるんだけど、開けてみたら名前違うだけで同じモノ」
「でも彼女厳格な家庭でしょ?」
「家出半分で飛び出させりゃいいじゃない。彼との出会いによってどんどん家がイヤになる。それが強調できる」
「あ~いいかも」
「てなわけでりえぼー追加して」
 いつも通りの彼女たちの脱線に、しかし面白いので笑ってしまいながら、どう言い返してやろうかと理絵子は思った。人をダシに話を作った上、結構神妙な話なのに、あのガイコツ似のサイボーグのイメージがくっついてしまった。私の涙を返せ。
 でも同時に、彼女たちのおかげで、“伝説の少女”のプレッシャーが消滅したことにも気付く。
 おばあちゃん。私がそれかどうかは判らないけど、向坂は放っておけない。
“彼女”達のためにも。

 

12

 

 丑三つ時。
 彼女たちは塚へ向かった。
 全員が手に手に携帯電話を所持している。理絵子のは録音モード、そして7人はカメラモードだ。内蔵カメラであらゆる角度から“現場”を撮影してやろうというのである。一気に7人でシャッターを切れば、隠すことは出来まい。
 とはいえ、先んじて悟られることが理絵子には見えている。あいつも“力”を持っているのだ。判らないわけはない。ただ、少なくとも、それがプレッシャーとして作用することは有益と見る。
 流れを歩く。乾いた音が聞こえてくる。かっつんこっつん。理絵子の判断に狂いがなければ、それは本来石工さんの作業だ。塚に何か小細工をしている。
 ワサビ自生地到達。
「あいつの気を引く。1分したら来て。みんなで塚を取り囲んで激写」
 理絵子は言った。

(つづく)

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