【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -28-
それでも構わず近づく一行に、
柴崎綾乃が絶叫した。
「キャー!来るな放射能キチガイ!」
これに。
「キチガイはどっちだ!この馬鹿娘が!」
絶叫を上回る大音声を発したのは果たしてレムリアであった。
「え……」
文字通り驚愕したらしく、皆の行動にストップモーションが掛かっている。
レムリアは王族の娘であるからして、往年の“城の塔から国民に触れを出す”習わしに従い、応じた発声訓練を受けている。肺活量の全てで全身の筋骨と空洞を共鳴させて相当なボリュームを一瞬で放つことが出来る。
“狂”が芽生えた者には尋常な物言いじゃダメで、驚かして正気に戻す。
「原発事故と影響を科学的に理解していない方が大勢おいでのようで。先生、説明したいので学級会の枠もらってもいいですか」
レムリアは言った。そしてウェストポーチから小冊子を取り出す。
放射線管理手帳。
「……自分の?」
担任奈良井は丸い目で問うた。それは放射線被曝が生じる職業に従事する場合に、被曝量を自主管理し、必要に応じて診断を受けるために所持するもの。
「レントゲンなぶりますし」
実際には例の空飛ぶ船の推進装置がガンマ線を放つからなのだが、まぁ、趣旨さえ伝われば良い。
「アンタも……放射能……」
「だまらっしゃい。ちなみに今アンタのナイスバディを宇宙から来たガンマ線や中性子線がガンガンぶち抜いてるがそういう認識はお持ち?」
柴崎綾乃はキョトンとなった。意味不明の呪文を突如聞かされたような面持ち。
「あれ?学校で放射性物質のこと習うのって……」
レムリアは自分の頭の上に目線を向けて訊いた。
「高校だろ。中学では原子爆弾とその被害、のみだろ。だから放射能、放射線という言葉に対して怖いという先入観を持つ。そのままこじらせて全て忌避するヒステリーがいっぱいいるけどな」
相原学は皮肉っぽく応じた。
レムリアはため息をついて。
「つまり何も知らないのにわめいてるだけね。今から説明しますから聞きなさい。内容を理解せず福島に滞在していただけで差別的な対応をすることを私は許さない。それでなお差別をするならありとあらゆる法的手段を駆使してその者を告発する。よろしいか」
レムリアはドスを効かせて言ってみた。もちろん、クラスにはあまりの展開であろう、誰からも何の反応も無い。
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