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【理絵子の夜話】圏外 -50-

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“ここ”
 呼ぶ声がし、理絵子は蓋石に触れる。
 蓋石の下は石室。
 石室の中には骨壺。
 それから。
 姿無き仲間。
“助けます”
 理絵子はその意を解した。
 超常のベクトルが、理絵子をアシストした。
 細い理絵子の手指で、100キロに近い蓋石が動く。
「うぉっ!」
 男を乗せたまま、蓋石が動く。
 重々しいその音は、さながら何かの開闢(かいびゃく)の砲声。
 石室の蓋が開いた。
 現れる。
 それは白き光の塊。
 それこそ“すばる”を思わせる、高輝度の恒星に似た白い輝き。
 ただそれは、理絵子にのみ恒星状と見える。特異能力を有しないのであれば、“何かの存在”は感じるかも知れないが、視覚化することは出来ない。
 輝きは次々と蓋石の下から出、塚を囲む女の子達個々の肩の上に座した。
 結果、放たれた念動の歪みは、女の子達に達することなく、洗面器の中の波紋のように、波源である男へと跳ね返された。
「……!」
 男が苦しげに胸をかきむしる。
「お前は何者」
 理絵子は問うた。問うたが、答えは、姿無き仲間から、先にもたらされた。
 欲望の権化。
 鉱山の時代、金による“酒池肉林”は、関係者にとってこの世への未練となった。未練は念としてこの地に残り(それこそ「残念」である)、やがてそれのみで構成された人格である亡霊となったが、金銭のもたらす贅沢は、肉持つ身でしか味わえず、ゆえに、憑依できる人間の登場を欲した。
 霊媒詐欺師向坂。
「向坂。あんたは最早ただの依り代」
「黙れっ!」
 向坂が腕を振り下ろし、再度、“歪み”を放つ。しかし恒星の描く星座のネットワークに跳ね返され、逆に自分が四阿から放り出される。
「……!」
 もんどり打ってひっくり返り、ショックで勝手に飛び出したような、意味をなさぬ声が向坂より発せられる。胸か背中をしたたか打ったようである。
 怯えが向坂の内部に芽生える。敵わないと判り卑屈になった。

(つづく)

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