【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -33-
ピーという機械音。
相原学がケースから取り出したガイガーカウンタである。液晶表示の上に赤ランプが点滅。
教室がどよもし、みんな諏訪君から距離を取った。
しかし、聴診器のオバケのようなセンサが向いているのは柴崎の母親。
「は?何そのふざけた……」
センサを指さすとまたピー。
衆目が柴崎の母親に。
相原学が口を開く。
「失礼ですが、何か、宝石を使ったアクセサリを身につけてらっしゃいますか?」
「は?何の関係が」
「人気のある色を人工的に作り出すため、放射線を浴びせた宝石ってのが流通してましてね。キャッツアイとか」
すると柴崎の母親はギョッとしたように己の手を見た。
指輪がはまっている。
そこへ。
「新聞で読んだことありますね。クリソベリル(chrysoberyl)に放射線を当てて色を変えた……でしたかね」
しわがれた低い男の声。
ギョッとしたように生徒と教員の人垣が反応し、モーセの海分けの如くサッと左右に分かれ、道を作る。
すっかり頭髪のはげ上がった小柄な男性。
「校長の笹塚(ささづか)です。特定の生徒に出席停止を命じるのは校長判断です。お控え下さい。それと、わたくしは母の胎内で広島の原爆投下により被爆しています。あなた様の発言、娘さんの認識は非常に心が痛い。ケロイドを揶揄され、ピカがうつると言われた、聞いただけの話が我が身に降りかかると、それがどれだけ人を傷つけるか、よく分かります。ちょっとよろしいですかね」
校長は……その“放射線ジュエル”の記事であろう画面を映したタブレット端末を柴崎の母親に渡すと、代わりに嵌めていた指輪をスッと抜いた。
「ちょっ……」
「ピカがピカを持ったところで何を今更ですよ」
ニヤッ(と、彼女レムリアには見えた)笑いを浮かべ、ガイガーカウンタのセンサに近づける。
赤ランプが付いてビービーガーガー。
相原学はやや演技じみたため息をついて。
「どこで買いました?これ。日本国内の鑑別会社ではこの手の奴は鑑定書出しませんが……」
「海外からネット通販……」
渋々、という口調で答える母親。
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