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【理絵子の夜話】知ってしまった(かも知れない)-02-

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 すると。
「ちょっと、りえぼー」
 大倉久恵が壁際から上半身を出して手招き。ショートカットの小柄な娘で、いつも空想しているかのようなぽーっとしているイメージあり。そのくせ時代小説でしかもホラーががったのが好きという感性。
「にゃ?」
「見てこいつ……」
 理絵子が応じると、大倉は著名な漫画家の名を口にした。立って歩き、人語を喋るネコが出てくるファンタジー作品で知られる。
「変なネコとか?」
「うん激しく変」
 その言葉に店の裏へと向かうと、隣接するスナックとの間、壁と壁との文字通り狭い間隙を、中井と今里が覗いている。
「どうよ」
 指さすそこを覗いて、理絵子は思わずおおぅ、と声を上げてのけぞった。
 ネコが後ろ足だけで立っている。
 背中が黒、お腹が白の、パンダ配色とでも言うべきミックス。
 確かに激しく変である。犬でいうところの“ちんちん”状態であり、知性ある二足歩行を思わせるその姿はまさにそのマンガ。最も、ネコがある生理的要求を履行する際に、恐ろしく“息む”と、こういう状態になると聞いたことがある。人間で言うとトイレでしゃがむ行為。
 後ろに影。田島。
「私一人残してひどいわ。乙女は寂しがり……何このネコ、うんこ?」
 身も蓋もない。
 するとネコは怒ったか、鼻白んで牙を見せ、田島を“睥睨”し、唸るようにひと鳴き。
「うんこじゃないってよ」
「ホントかよ」
「じゃぁ何の用じゃ。申してみよそこの者。とか言ったら……」
 それこそ、そのネコのマンガの読み過ぎ?と、大倉は付け足した。
 理絵子は仲間達のやりとりに最初笑ったが。
 ハッと気がつく。ネコかて人と気持ち通じ合う生き物だからこそ、遠くエジプトより人と暮らしているのだ。本当に何か言いたいことがあって態度に出しても不思議じゃない。
 理絵子はそのネコを見つめる。ネコが見つめ返す。
 マンガの読み過ぎ、ではないようだ。理絵子はしゃがんで、ネコの顔をじっと見た。
 試みたことはないが、意志はあるということなので、不可能ではあるまい。
 ネコの大きな瞳孔に、自分の姿が映っている。
 と、中井が理絵子の頭の上で理絵子と同様にネコを見。
「あのさ」
 彼女は理絵子を指差した。
「この状況、りえぼーがネコの意志を読み取ろうとしている、という風に思えるのは私だけ?」

(つづく)

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