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【理絵子の夜話】知ってしまった(かも知れない)-05-

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 理絵子はヒモを手に取る。切れ口を観察するように眺めるが、実際していることは、
 サイコメトリ。要するに超常感覚的知覚の一種。
……理絵子がネコの意志を読み取ろうとしているのでは。中井のこの発言は、実は間違いではない。ちなみに、理絵子はこの文芸部の連中には、自分の能力を公言していない。
 理絵子は切り口をしげしげ眺める。ヒモを介し、種々の情報が記憶の映像のように読み取れる。
 の、中に仰天。
 なに?空から落とした?
 というか、その傷や破れも本当は…
「りえぼーどしたの?」
「うにゃ別に……」
 理絵子はそう答えた瞬間、直感の閃きを受け取った。
 それは図書館駐車場から、この公園下へ流れ込んでいるどぶ川。
 引き寄せられるように歩み寄ると、園灯に照らされた水の中に光るものキラリ。小振りなロウソクを思わせる細い筒状で無色透明。確かにクリスタルでできているようだ。
「綾~ちょっと」
 田島を呼び、携帯電話のカメラで撮影させ、王子様に確認に走らせる。
「あ、これです。すいません」
 田島が理絵子の元に駆け戻る。
「行ったり来たり疲れるのぉ」
 王子様の額に絆創膏を貼り終えた中井が理絵子の方へ来、どぶ川を覗き込む。
 その中井を追ってネコも歩いてきた。まるで自分も人間の仲間と言わんばかりの動作である。ちなみに少女達は“ますむらくん”と呼んでいる。
「あ、これかぁ、良く見つけたねぇ」
「何で判ったのさ」
 と、田島が横目で問う。当然の質問。
「キラッと光ったように見えた」
 用意していたありきたりな回答。
「ふーん。……いや時々思うんだけどさ。我らの部長って何か目に見えないもの見えるんじゃないのかね」
「あははははは」
 理絵子は人ごとのように笑って見せた。肯定も否定も致しません。
 すると田島は脱力したようにがくんとうなだれて。
「……なんかこの小娘に小馬鹿にされたような気が。フン、ど~せ発想が荒唐無稽ですよだ。んで?頭およろしい部長殿はこの笛をヘドロの中からどのように?」
田島の指摘もっともである。何せドブ川だ。それこそ駅前商店街などの生活排水の集合体である。水面は得体の知れぬギラギラしたもので覆われ、積もったヘドロは底が知れぬ。笛はそのヘドロに先端を突っ込んだ状態だ。
「文字通り“すくい”出しますよ」
 理絵子は笛から目を離さず、ポケットをゴソゴソして、電子マネー“edy”を取り出し、田島の前へスッ。

(つづく)

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