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【妖精エウリーの小さなお話】デジタル -01-

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 妖精族は私たちニンフのように人間界で活動する者も、そうでないものも、基本的な住居自体は“フェアリーランド”にあります。天国の一角で大地の女神であるガイア様をいただき、森と水と草原の中、虫や動物、そして私たちで暮らしています。
“それ以外の知的生命”は、まれに人間さん、とりわけお子様が迷い込むことがある程度。不思議な夢を見た、という子供さんがたまにいると思いますが、多くの場合ここへ来ています。
 なのですが。
〈「いる」んですが「見えない」んですよ〉
 取れたての蜜を指先に分けてくれながら、ミツバチが教えてくれました。勿論彼女らは人語を喋りません。意思だけの疎通……テレパシーです。
「存在は感じるわけね」
〈困ってる風なので助けてあげたいんですが、姿がないのでなんとも〉
「どこで見かけたの?じゃない、感じたの?決まった場所?」
 私の質問には理由があります。似たような相談はミツバチだけではないのです。トンビや他の昆虫たちからも。何かいる気配はするけれども、見えないし、聞こえないし、意思の疎通も出来ない。
 ただ、みんなの言うことに共通点があれば、ヒントになるはず。
〈川向こうのレンゲの咲いてるところです〉
「いつも蜜集めしてるところだね」
 私は白い一枚布を巻きつけた着衣、トガの袖からタブレット端末を取り出すと、地図を表示させました。東から森があって、抜けると一面の草原、小川が横切って更に草原、もう少し西へ行くと大きなクスノキが一本生えていて、そこから丘が始まります。
 小川向こうの草原に赤い丸印を指で描いてマークします。同じマークは森の中、森と草原の境目、小川の近くにも。
 境目に集中、と言えるかも知れませんが、バラバラで特徴がないよと言われるとそのようにも見えます。
「他に同じことを感じた子はいる?」
〈いるかも知れません。巣の中で展開して報告しに来させます〉
「ありがとう」
〈いいえ〉
 ミツバチは飛び去りました。
 この空間に住む生き物達に、姿無き存在への不安が広がりつつあると感じます。早いところエンカウントして敵味方ハッキリさせる必要がありそうです。天国の一部と申しました。応じて“魔”があって、常にここを狙っています。

(つづく)

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