« 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -02- | トップページ | 【理絵子の夜話】午前二時の訪問者 -19- »

【理絵子の夜話】午前二時の訪問者 -18-

←前へ次へ→

 夜が明けた。
 本橋美砂が非常な高熱を発したこともあり、そのまま数日、彼女の身柄は黒野家で預かった。その間に田島家とは一通りやりとりし、理絵子はその特異能力を持って、本橋美砂との和解を得た。
 そして、主旨を本橋美砂に説明。
「民宿の仕事は主に朝と夜だから、日中は普通に高校に通いなさい。県境越えるから片道2時間だけどそれは勘弁。学費は田島さんところが保護者として奨学金を申請した。認められて支給されるまでしばらく掛かると思うけど、それまではウチが持つ」
 理絵子の母親はそう言い、預金通帳と印鑑、キャッシュカードを本橋美砂の前に出した。
 本橋美砂は仰天の面持ちで母親を見た。
 何と言っていいのか判らないのである。幼くして両親に先立たれ、兄が泥棒行脚では、期待通りの返事など来ようはずもない。
「ありがとうって受けとりゃいいんだよ」
 母親は笑って言った。
「あ、ありが……とう」
「澄んだ声してるじゃない」
「え……」
 そして冬休み最終日。
 黒野家のクルマには、家族3人および本橋美砂、ぽっちゃり体型でメガネを掛けた田島綾。最近そばかすが出てきたとかで、三重苦だと悩んでいる。
 舗装のひび割れた細い道を通り、民宿“旅荘塙(はなわ)”へ。木造2階建て瓦屋根。若干寒冷地に属し、北側の壁際には大きな灯油タンクが設置してある。
「お待ちしてました」
 出迎えたのは女将である割烹着の女性と、主人である作務衣姿の男性。
「おじちゃんおばちゃん!」
「綾ちゃん久しぶり。で?どこ?その超美少女は」
 女将さんが興味津々。
「目の前に」
 田島綾は自分を指さした……彼女はギャグマンガが大好きである。
「あらまぁ確かに美少・女だわ」
 女将さんが大げさなアクションで応じる。
「どうしてそこで区切るの?ひどいわひどいわぷんぷん。はい。じゃぁ大公開、超美少女なお姉さん。本橋美砂さん」
 理絵子は綾を連れてきて正解だったと今更思った。そもそも付いてくると言い出したの自体は綾本人ではある。「仲介役だから」。確かに、この宿との付き合い始めは、クラブの夏合宿の場所に困っていた彼女たちに、綾が掛け合ってくれたことによる。
 今回は大人同士の契約事ではあるが、理絵子が来て綾が来ないは不公平だろう。
 でも、彼女の徹底的なボケっぷりは、初めての顔合わせや本橋美砂の心境、それらがもたらすであろう“気まずさ”を回避するのに極めて都合がよい。

(つづく)

|

« 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -02- | トップページ | 【理絵子の夜話】午前二時の訪問者 -19- »

小説」カテゴリの記事

理絵子のスケッチ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -02- | トップページ | 【理絵子の夜話】午前二時の訪問者 -19- »