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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -03-

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「姫ちゃんだってお」(だってよ、のネットスラング。2010年代)
「え?お前らデキてんの?」
「事件事件」
「何かあった?」
 冷やかす声を無視して彼女が問うたら雰囲気が一気に変わった。
 真剣かつ急を要する事態という理解が広がる。
「いや、あの、ごめん……」
 彼は動作を切ってきびすを返そうとしたが、
「いいから!。たった今お休みと聞きました。なのに飛び込んできて私に直。私が必要なら動きますよ。何があったの?」
 訊きながら……彼の思惟を探るが、驚いたことにテレパシーが入り込めない。恐ろしく強く固い壁があるのだ。
 まるで心を閉ざしているかのように。
 葛藤は受け取る。一か八かの結果が自分なのだが、そんなことをしてはいけないという強い諫め。
 極めてプライベートな内容なことだけは確か。能力上げれば切り込めるがやりたくない。
「生徒相談室を開けましょうか?」
 奈良井が提案してくれた。
「え、でも……」
 衆目に困惑する平沢。言葉なき「ごめん」のように彼女を見つめる。
 彼女は笑みで返して。
「呼び出して何を今更。遠慮しないで。全世界に様々なツテがあるから、スキルとエビデンスは集まるよ。行きましょう。先生お願いします」

 職員室の二つ隣。
 鍵束から担任奈良井がようやく見つけ出して引き戸を開けると、ホコリすら動いていない印象。
 あまり使われていない。
 いいか悪いかはさておき。事実として。
「どうぞ。オバケ出たりしないから」
 促されて二人はソファセットへ足を進める。ソファは横長の応接卓を挟み、向かい合わせに4脚。
「私、いた方がいいですか?いない方がいい?相原さんは事情を知ってるみたいだけど」
 いいえ全然知りません……ただ、応じた開示はしてくれると思う。
「平沢君次第だけど」
 彼女は水を向けた。
 彼は一瞬、逡巡し、
「いえ、自分で話します」
 しかし強くそう言った。
「そう。じゃぁ終わったら声かけて」
 担任奈良井は言い、ドアを閉めて歩き去った。

(つづく)

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