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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -04-

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 廊下を行く足音が遠ざかる。
「あの、えと、ごめん」
 平沢はまず言った。
 彼女はソファに腰を下ろした。
「いいよ。それで……相原姫子として、それとも、レムリアとして?」
 レムリア、というのは彼女の国際的通り名である。特殊な方法で人命救助を行う。秘密を共有できると信じた友にだけ教えている名前。ちなみに、彼にはその“特殊な方法”を見られたこともあり、開示してある。
 つまり、級友としてではなく、そういう、特殊スキルを要する相談ですか?
「うちのばあちゃんがいなくなったんだ」
 福島県三春(みはる)にて夫君と死別し、おひとりでお住まいであったが、原発事故を機にこちら東京で彼のご家族と同居を始めた……と彼は説明した。
 お年寄りの行方不明というと、いわゆる“徘徊”が思い浮かぶが。
「近所探しても見つからなくて……それで、なんか知らないけど、姫ちゃんなら、れ、レムリアなら道が開けるかもとか……ごめん、図々しいよね。やっぱり」
「いいえ」
 狼狽を見せる平沢に彼女……以下、意を汲んでレムリアと書く……はゆっくり応じた。
 これでも看護師でテレパス。可能な範囲で。
「順番に状況訊かせてね。おばあさまは、認知症はあった?」
 徘徊と言えば背景にこれがあることが多いが。
「いや……こっち来てすぐ、物忘れが多いとか、ぼーっとしてるとか多くなって、介護保険の認定とかやってみたけど、そういう判断は出なかった」
「直近で脳梗塞とか起こしたことは」
「ううん。膝が悪くて病院行ってるけど。あとは血圧の薬飲んでるくらい……え、膝かな。途中で歩けなくなったとか」
 それはない。という直感、それこそ超感覚的回答。
「ないと思う。この近所で動けなくなって他の人の目に触れないことはないでしょう。昨日、一昨日でいつもと違うところは?」
 平沢はうーんと考え込んで。
「オレ、部活と塾で帰ると8時なんだ。その間にばあちゃん風呂に入ってて、オレが風呂入ってる間に寝ちゃう。だから、ここ2~3日は話してないや……え、それがまずかったのか!?」
 立ち上がる勢い。
「違う違う。落ち着いて。認知症って怖くて、倒れて一晩入院したら別人になってましたとかあるわけ。ケガや病気で何か回復不可能な不具合を持ってしまったり、絶望した瞬間にガラス割れるみたいに人格が壊れちゃう。そういう一般論に基づき訊きました。進(すすむ)君が把握している範囲では変化はなかった訳ね。ご家族からそういう話も出なかった」
 平沢は頷いた。

(つづく)

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