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【理絵子の夜話】サイキックアクション-01-

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プロローグ

「汝、守りたい者はあるか」
 問う声があった。
 成人した、しかしまだ若い女の声だ。
 日本語で、肉声のように感ぜられたが、夢の中だと理絵子(りえこ)は認識している。しかしそこは意識だけで動く世界であるから、幽体離脱(アストラルプロジェクション)の状態との区別は難しい。幽体離脱の可能性の故は、その声の主を理絵子は知っており、相互に住んでいる時間と次元が異なる。
「家族と、友と、クラスメート」
 答えると、声の主の姿が浮かぶ。鋼の武装から金色の髪をなびかせ、こちらを見つめる馬上の麗人。
 北欧の伝説に名を残す戦女、アルヴィト。
 逢うのは二度目である。死神に襲われた際、時空を超えて助太刀に来てくれた。その際、必要に応じ助けを求めよ、と言ってくれた。
 そのアルヴィトが自分の夢に。余程の事態ということであろうが、その理由はすぐに判った。
 自分が絡んだ事件が先に起こった。エセ宗教家から友人を救い出すに際し、その宗教家の教会が爆発し、宗教家と周辺が死亡したのだ。
 それは巨大な罠だったと警告に来てくれたのだ。自分と、自分の大事な全てを破壊するため魔が仕組んだのだという。そして、それを“夢に直接”の故は、テレパシーや、類似の超常感覚による察知の防止。
「汝の意思は受け入れた。だがしかし、肉の身に収まっている者は逆に我らからは察知できぬ。これからの時制は防げるが、過去に属する既には防げぬ。戦いに備えよ。よろしいか」
「はい」
 理絵子は答えた。その事件の場において、ただでは済まぬと思っていたが、全面・全力で攻撃に来るというのか。
 超能力で攻撃される。SF・恐怖マンガそのものの世界。伝説級の魔族が戦いを挑んでくる。少し前の自分なら怖じ気づいていたかも知れぬ。なぜなら自分は“感覚”は持つが、念動力・サイコキネシスは持たぬ。
 しかし今は違う。知る力を持つ自分と、守る力を持つ友と、
 攻める力持つ“姉”がいる。
「心を閉じるな。それこそが罠だ。恐怖に負けず開いて居よ。ならば、私は常にこちらの側から汝が見える」
「ありがとうございます。どうぞその時はお力添えを」
「心得た」
 馬上の戦女は振り返って笑んで見せ、髪をたなびかせ馬にて去った。

(つづく)

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