【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -06-
彼の説明は要領を得なかったが、彼の思い描いた画像をつなぎ合わせるに、その昔、蒸気機関車が客車を牽引していた時代の名残で、旧国鉄時代から続く列車のことを“汽車”と呼ぶ年代であり、それに引きずられて彼も汽車と呼んでおり、列車そのものはJR八高線と同型のエンジン駆動の列車が走っていると理解した。まぁ鉄道の詳しいことはフィアンセに訊けば判ろう。
「おばあさまはこちらへ、東京へ遊びに来たことは何度もあるのね?」
「うん」
「じゃぁ、そのルートに沿って探してみましょうか。それとも既に」
「駅には警察から確認してもらってるはず。でも……」
そういうレベルか。レムリアは少し落胆した。ハイテク日本じゃなかったのか?
逆に言うとそれならそれで自分の方で別のアプローチがある。
「おばあさまの写真はお持ち?」
「家に行けば……」
「お借り出来ないかな。画像検索にかける。ビッグデータって奴」
「それって……」
平沢は目を見開いた。前述の特殊な方法……空飛ぶ船で世界各地へ駆けつける。彼はその船を目撃したクラスの数少ない一人。その船の電子能力を使う。
「わかった。ありがとう。ちょっと親に電話してみる……あ、でも何て説明しよう」
「友達が協力してくれる、でいいと思うよ」
「わかった。……で、その、ありがとう」
「クラスメートの家族を探すので授業に参加しません」
それは認めれば教員が組織に咎められ、逆であれば生徒達から人でなし扱いされる。
なので彼女らは、相談室を使い終わったとだけ告げて、そのまま黙って学校を出て来た。
「オレはいいけど……姫ちゃんは……」
「いいの。呼び出されるのはウチの親だし」
以下、“レムリア案件”ということで彼女の名をレムリアと書く。
中学校は丘の上、公園の向かい側にある。校舎を出て左へ折れ、その公園を右手に見ながら坂を下りる。
住宅地が広がる。丘から続く高台を崩してひな壇状に開発したもの。彼女の家はその中程にあり、彼の家は横切って宅地の西端、さらに、
「お寺と墓地あるじゃん、その向こう」
彼女は頷いた。自分の家の前を通り過ぎる。不思議な感覚。
家の前の通りの向こう、ひな壇の奥へ続く“メインストリート”とのT字の交差点におばさんの二人組。
二人とも左腕にグリーンの腕章を付けている。
平沢が舌打ち。
「巡回だよ。どうする?」
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -023-(2024.10.05)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -13-(2024.10.02)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -022-(2024.09.28)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -021-(2024.09.21)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -12-(2024.09.18)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -13-(2024.10.02)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -12-(2024.09.18)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -11-(2024.09.04)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -10-(2024.08.21)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -09-(2024.08.07)
コメント