« 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -08- | トップページ | 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -09- »

【理絵子の夜話】サイキックアクション-03-

←前へ次へ→

 挑戦の意思と殺意。
〈しくじった〉
〈いえ〉
 少なくも大剣はそれを人格統合体として存在することを阻止した。
〈理絵ちゃん!〉
 呼ぶ声に振り返る。もう一人の霊的な友、高千穂登与(たかちほとよ)という。
 テレパシー使い。
 振り返った理絵子の視界に映じたのは、庭で歯を剥いてシャーと威嚇する……ネコの姿であった。近所に居着くでっぷりと大柄な虎縞の野良猫、トラと呼ばれる。庭でたまに糞をする。
 憑依されているのであった。それは分裂してその程度になったのと同時に、理絵子に挑戦しているのだ。憎たらしいとはいえネコが殺せるか。
〈任せて〉
 理絵子は声に出さず友二人に答えた。答えは持っている。
 トラが異常な跳躍力を発揮して庭から飛びかかってくる。引っ掻こうと出された前足を、首傾けて数ミリで避ける。
 トラが座敷に飛び降りる。
 しかしその時理絵子は元の場所にいない。
 その代わり、右手にハサミを持ってトラの背後にいる。ハサミは美砂に念力で取り寄せてもらった。自分の意識は読めるようだが、友が何をするかまでは見てはいないだろう……斯くて然り。
 トラ、に憑依した者がそれと気付いたとき、理絵子はトラのひげを切り落とした。
 ネコとしての本能的な行動意欲が減退する。分裂して低下した能力の故に、ネコ本来の能力に依存し、霊はそれ以上のことはできない。
 トラが突如バタリと倒れる。失神したのであり、憑依者が抜け出したのだ。そこへ霊界から剣が伸びて来てぶすりと刺してしまう。
 剣が力として吸い取る。まるでヒキガエルを食うヤマカガシが、その毒を我が物とするかのように。
 この一連の動きを見ていて。
 驚愕を有した心理が畳の下一面に広がっていると理絵子は知った。
 “一つの意識”ではない。
 そしてそれが来る。
 床下から庭へ黒い泥水のような物が流れだし、波打ちながら広がり、その泥水が一気にバラバラになり、理絵子と、姉と、友へ、一散にぴょんぴょん跳びかかる。
 夥しい数のコオロギの仲間、カマドウマ。
 美砂が腕を下から上へ振り上げた。念動力が発動され、太鼓をたたくようなドンという音が響き、家の中から暴風が生じ、引きずられるようにカマドウマがざあっと空へ持って行かれた。
 しかし畳の隙間から止めどなく泥水が染みだし、次々にカマドウマに形象を変えて這い上がってくる。

(つづく)

|

« 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -08- | トップページ | 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -09- »

小説」カテゴリの記事

理絵子のスケッチ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -08- | トップページ | 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -09- »