【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -09-
「スキャンしても?」
「今はもっとしわくちゃだよ」
「補正推定ができます。後で今の年齢をお伺いします」
冷徹で不躾だと思いつつ。ウェストポーチから取り出す軍用トランシーバみたいな外観の衛星携帯電話。アダプタで接続するサイコロみたいなカメラ。
アルバムの幸せと真逆な、角ばって黒い機器たち。
衛星電話なので空が見える場所じゃないと使えない。窓際へ持って行って通信確立。送信待ち(Waiting...)と文字が出てカメラで撮影。
送信している間に写真に手のひらで触れる。サイコメトリ(Psychometry)。それは込められた思いを事後読み出す能力と言えば適切か。
「体が大きいから運動が得意かな……大学に行って苦労しないでほしいな……」
彼女は拾った思いが勝手に口から出ていることに気づいていない。それは祝福のきらめきのゆえに彼女の自制を超えて飛び出してしまった。
気が付く。この写真に「おじいちゃん」は写っていない。
「この時、おじいさまは?」
この質問には叔父殿が応じた。
「もう、入院してたな。……心臓だった」
おばあちゃんの思いを探す。
“私だけ写っても”
応じた内容。および、これが“トリガである”という感覚。
行く末を知りたくてアルバムを数葉めくるが、「おじいちゃん」と映った写真は出てこない。
あったが、遺影とともに。
“会わせたかった”
彼女は、アルバムを、そっと閉じた。
「姫ちゃんどした?」
彼女の頬伝うきらめきにうろたえる平沢。
「気にしないで……あなたは、祝福と期待に包まれて育ったんだねって。ええと、おばあさまが普段過ごされてる部屋はどちら?常用されてる薬とか確認したい」
振り払って立ち上がる。なお彼女の発言には一つ嘘がある。本当に欲しいのは“現在のおばあさまの感情”である。
「ああ、なるほど。ええとこちらですどうぞ」
叔父殿が手のひらで示す。いったん廊下へ出、少し歩くと右側へ折れている。奥へ進んで階段だがそこではなく、左手、襖を開く。
ガタガタと滑りの悪い襖を男の力任せで開けると和箪笥と茶箪笥が向かい合う和室。ちょっと埃っぽい。
“心ここにあらず”
それは第一印象。あまり、この部屋に対して“自室”という感情をお持ちでない。
と、ブスブス……という感じのオーディオ的なノイズ。
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