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2021年4月

【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -11-

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 人の心を追える能力が人の心をつかめない。能力不足か、テレパシーでそんなことするのはおこがましいのか。
 認知症については、一晩でなってしまったとかあるにはある。が、布団は綺麗に畳んであるなど、その可能性はあまり感じない。もっとも、あまり良い言葉ではないが“まだらボケ”と呼ばれる認知機能が短時間で正常と非正常を行き来する現象もある。
 そこでピロピロ言う電子音。着信待ちで窓際に放ってきた衛星電話。
「失礼」
 メールである。受信しに戻る。テキストを繰ると、所属団体が“画像を受領した、どこを検索すればいいか”。
 おばあさまが通りそうな場所。
「ここから三春に行こうとすると?東京駅までは?」
「中央線で東京へ出て、だな」
 最寄り駅の名前と東京を伝える。
「でも警察も同じところを探してて、何も連絡が来ないよ。兄貴がそろそろ郡山についたと思うが……電話してみるか」
 叔父殿がポケットを探りながら部屋を離れる。あー、もしもし……。
 彼女はラジオを手に取る。ご位牌と遺影はそのままということは、家出的なニュアンスは感じない。
 ラジオから感じ取ろうとする。蒸気機関車、咲き誇る大きな桜。
 俳句の同好会。その宴席。
 届いた誕生の知らせ。
 それが、最も、そして、繰り返しの“思い”であるなら。
「行ってみましょう」
「三春へか?」
「少なくともそこへ向かったのなら、途中途中で手がかりが掴めると思う」
「でも防犯カメラには……」
 ああしまった。テレパシーで探りながらなんて言えない。
「とりあえず、駅のカメラのハッキングしか頼んでないから。都度都度あのカメラは?とか要求しながら行こうかと」
 そこへ叔父殿の大きな声。
「来てないってよ!」
 しかし、ベクトルは三春を指向している。
 レムリアは戻ってきた叔父殿に相対した。
「わたし、東京駅へ向かおうかと思います」
「ええ!?いやそんなそこまで他人様に……」
 彼女はコンパクトカメラ裏側の液晶画面を叔父殿に見せた。
“加齢加工”してある。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション-05-

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 背中合わせに登与が一言。
〈死。破壊。虚無……あなたを亡き者に出来ればそれでいい。肉の身を奪い心むき出しにしてその心弄び狂わせる〉
 霊的生命はいずれも男性的特徴を露わにした。性的な方向か。それは棒状であると知るが、全部つながってリングになっている。それに自分たちは囲繞されている。
 ならば。
 変な話男性同性愛を扱ったティーンズノベルの応用である。性的に気持ちよくなって頂く。心理的バイブレーション。リングが膨張し、赤らんでビクビク震え出す。
〈達する直前に寄越せ!〉
 声があった。戦女アルヴィト。“気持ちよくなった”霊的生命は一瞬だが状況を見失った。その一瞬に彼女に引き渡す。
 アルヴィトは聖剣で全員切り刻んでしまった。
 これに大変な驚愕を示したのが“黒い顔”であった。沈む太陽のように闇へ消えようとする。
〈逃がすな!〉
「オン・ロケイジンバラ・キリク・ソワカ」
 十一面観音の真言。
“守護”
 この場で用いるべき力のベクトルとは真逆の方向であろう。理絵子自身、なぜこの言が口を突いて出たか知らぬ。それは黒い顔もそうであったようで、驚愕からか動きを止めた。
 その状態は霊的な時空と肉体世界との接続点が時空構造を壊して出現している状況であって、急激な気象的擾乱を励起した。唐突に雲が起こり発達し、雷鳴轟いて雨が滝。
 周囲に迷惑がかかる。長い時間は掛けられない。理絵子は認識し、黒い顔と対峙した。
 神話の挿絵に出て来るゼウスを思わせるヒゲ男。
 が、ニンマリと口を開き、歯が剥き出され、よだれを垂らす。サディスティックでやや狂が入った笑み。
-滅す-
 黒い顔の意志は明確であった。自分を消滅させる。
 示唆が来る。この真言を遣わしたのは真言自身。つまり、言霊(ことだま)。
 言霊は言う。我を解け。
「ドシャコ!」
 理絵子は口にし、空中を“デコピン”のように中指で弾いた。
 現実世界に突き出た顔に天空から聖剣一閃。
 アルヴィトが突き出た首を切り落とした。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -10-

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「何の音だ?」
 超感覚を持っておるわけだが、それとの相乗効果か視覚聴覚は鋭い方。
「あれですね。ラジオですか」
 彼女は茶箪笥の上に置かれた手のひらサイズのラジオを指さした。くすんだ銀色で所々へこみも見られる外観。色褪せたソニーのロゴ。
 何十年も前の製品とみられる。ボリュームと周波数チューニングがそれぞれダイヤル式で、周波数表示の上を矢印が動く構造。
 示唆。この機械は、重要。
「電源が入りっぱなしなのでは……」
 手にすると……それは、おじいさまのものと判ずる。チューニングダイヤルを少し動かすとクラシック音楽が流れた。
 後年、体調を崩して臥せっていたおじいさまは、ずっとこれを聞いてた。病状も手伝い、次第に視覚聴覚が失われて行く中で、手の感覚だけで操作することができ、いつもと同じ声を聞いていた。それで安心できた。
 そして、形見になった。
 愛するものを失った心の彷徨。
「これらの調度品は、福島から運び込まれたのですね」
 ぐるり見回す。照明はドーナツ型の蛍光灯でスイッチは引きひも。
「ええ、ここは元々僕が下宿させてもらってて、勤めるようになってから空き部屋で。親父が死んだあと、お袋に来てもらおうと部屋の中のものを持ち込みました」
 綺麗に畳まれた布団と、古いつくりの鏡台。おじいさまの写真とご位牌。
「おじいさまは……」
「だから死んじゃ……」
「違う、仏壇という意味かね?それはさすがに大きすぎるので位牌だけという次第……そのせいかね?」
 平沢進の発言を遮って叔父殿が尋ね、身を乗り出すように彼女を見て目を見開く。
 彼女は弱く首を左右に振る。なんだろう、ここにいて強く感じるのはひたすらな空虚だ。サイコメトリが作用しない。どんな思いでここにいたのか判るような、思考の痕跡を残していない。“心ここにあらず”……これほどのものとは。
「立ち入ったことをお伺いしますが」
「なんでしょう」
「おばあさまに関して、脳や心の状態について医師の診断を受けたことは?」
「要はボケとるか?ということだね。要支援の認定はされたが要介護ではないよ。MRIの診断も年齢相応だが認知機能に問題はない」
「ここ数日の状況は?食欲や、普段することをしなかったとか」
「どうかな。元々食が細いしなぁ。ケアマネさんから何か聞いてるか?」
 平沢進は首を左右に振った。
「いや、特に」
 そうですか……彼女は頷いた。現時点、彼女の判断は“テレパシーのルートは閉ざされた”である。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション-04-

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〈キリが無い〉
 登与が呟いたその時。
 どん、と音を立て、天井から黒く大きな毛むくじゃらが落ちてくる。
 人の顔より巨大なクモである。天井を破って出てきたわけではない、テレポーテーション的にそこに沸いて出た。大きさといい、もちろん、節足動物のクモそのものではない。
 理絵子は知っていた。海岸の洞窟で、疎まれて寂しく死んだ姉弟を守っていた霊的なクモだ。
 すさまじい速度でカマドウマを駆逐して行く。喰らい、潰し、粘液を吐きかけて溶かし。
〈あなたは……〉
〈それより教会に行って下せえ。すげえのが出て来る。こいつらは単なる足止め〉
 クモの助言に“地の底からの唸り”のような声を理絵子は聞いた。もちろん霊的な物であるが、策が露見しての悪態として良いようだ。なお、教会というのは理絵子の友人が騙されて連れ込まれ、暴行および洗脳を受けそうになった外観上キリスト教のそれに似せた施設。友人を助ける際人死にが出た。
 そこを“軸”というか“穴”というか、何かしら変換点として“現れ出でよう”としている。
〈行くよ〉
 本橋美砂に連れられる。身体が周囲の空気ごとぐいと動き、引き寄せられるように庭へ移動し、空中へ浮遊する。
 それは超能力ものSFに出て来る“空を飛ぶ”イメージを覆した。“可能な限り高速で移動する”経路に空中を選んだだけ。映像ディスクのCM飛ばしに近い。自分たちだけ空間まるごと切り取られ、チェスの駒のように動かされているイメージ。風が吹くでなく、音がするでなく、落下するような気持ちはないが、逆に飛翔している感覚もない。景色だけが飛躍した。
 教会の上空に達する。黒塗りの高級車、スーツの紳士と刑事数名。
 空中に出現した彼女らに向かい、気付くはずの無い刑事らが振り仰ぎ、その腰ベルトから銃弾が発射される。
 同じことを何度も……。理絵子が思った瞬間。
〈罠!〉
 不意に“空中に投げ出された”形になり、服と髪の毛乱れはためかせ、轟と風唸る音聞きながら落下に転じる。その間仰向けに呪文を唱えよと示唆を受ける。真言を口にし手指絡めて印契を結んで胸の前へ。
 仰向けになって全容が見て取れる。空中に黒く大きな顔があり、口を開けている。その下に一人立ち向かう形で浮かび続ける本橋美砂。
〈私はいいからあなたは自分とお友達を〉
「ノウマク・サンマンダバザラダン・カン」
 不動明王真言一閃。
 結界が作られ、自分と登与と2人中空にビシャリと停止する。そこがあたかも地面かのような盤石さである。見渡すと何やら囲まれていると判る。リング状の霊的生命である。

(つづく)

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