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【理絵子の夜話】サイキックアクション -08-

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 呪文唱えてもたらされた示唆は意外なものであった。
 が、天の命であればそうと応じる。
「楽になりたい?」
 理絵子はしゃがみ込み、迷子の幼子に対するように、小さな影と化したクリュサオールへ問いかけた。
 すべからくその場の女性達は驚いた。しかし、すぐに、まずアルヴィトが番えた弓の弦を緩め、続いて美砂と登与が切っ先を下ろす。
 怒り続けるにもエネルギがいるのだ。精神的疲労という奴だ。
 大日如来のビジョンを送ってやる。太陽の化身、沸き上がる穏和と温もり。
 そこに、ゆだねていれば、いい。
「怒りとか、憎しみとか、それは、後付け」
 理絵子は言った。
「嫉妬はあるかもね。あれいいな、だけどどうして自分には……ただそれは、多くの場合、努力不足」
 クリュサオールは鋭く反応した。努力不足……自己否定に対し怒りを示したのだ。図星である。
 だが、それで自分を攻撃してくるか、というとそうでもない、理絵子は判っていた。
 “怒り狂う必要の無い安寧”のイメージを理絵子は送り続けている。それがクリュサオールの心動かしていることを把握している。
 “心”動かす力は“心”にしかないのだ。
 しかし。

-騙されるな!

 声があり、剣の体をなしたクリュサオールは男の手に持たれた形でそこにあった。
 先ほどのヒゲ男である。しかも巨大だ。陰部が人体よりも大きく性的に興奮した様相を呈している。刹那の間に出現した。
 殺人行為に性的興奮を抱く倒錯者を思わせた。ロリコンにしてネクロフィリア。
 変態の極北が擬人化した姿であった。
 アルヴィトが即座に矢を射たが、性的巨人はそれをたやすく手のひらで退けた。
 性器はヘビの様相と挙動を見せた。自在に操りたい……男性権化の結晶と言えた。同時に、女性心理にとっては最高の拒否対象。根源的恐怖が存在し、そこを揺さぶられると感じる。ちなみに男性心理の結晶としてギリシャ神話のゼウスが知られる。そこで以下この者を魔神ゼウスと称する。
 比して美砂のシールドバリアが強い。それは心の頼りどころ。
 何か心理に入ってこようとし、理絵子はそれを阻止する。見せたくないものを見せようとしていることは明白。
〈私たちの“パターン”をクリュサオールから読み取った〉
 登与が言った。つまり、“先を読まれる”。
 再びの刹那であった。

(つづく)

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