【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -12-
「すげぇ。そっくりだ」
野太い声がハーモニーで反応。満場一致というところか。
「これで駅員さんとか直接聞いて回ろうかと。郡山ではお父様、あと、このご近所も探してらっしゃるのでしょうか?それはそのままお続け下さい」
彼女は2人を交互に見ながら言った。
「おじさん、俺が姫……相原さんに同行するから。やれるだけのことやろうぜ。親には駅まで歩いて探しに行ったとかテキトーぶっこいてよ」
叔父殿は折れた。
「オーケー判った。ただ、時々連絡をよこせ……お嬢さんのそれは何か凄いが携帯なんだな。進は俺の番号知ってたな」
「ええそうです。状況変化あればご連絡します」
「じゃぁ、頼むわ。すまんが。あ、お金が要るな」
叔父殿は胸の内ポケットに手を伸ばす。移動に要する費用であろう。彼女は断ろうとしたが、この状況で“赤の他人”に足代出させるというのは叔父殿も気が引けるか。
「三春まで行けるはずだ」
叔父殿は財布から1万円札を数葉、わしづかみという感じで取り出し、平沢進に持たせた。
「……大金過ぎて怖え」
「しっかり財布に入れて持ってけ」
「おう。……姫、相原さんちょっと待ってて。財布取ってくる」
家の前で叔父殿と分かれ、バス停に向かう。それは“軌跡”をたどっているという示唆は受ける。が、思考の足跡は感じない。客観的な結論は“何も考えず駅への道を行った”だが、そんなことあるのだろうか。やはり認知機能か。
我がテレパシーかくも無力か
バス停の時刻表を覗く。バスは20分間隔で次の便は15分後だが、持て余すので通りがかったタクシーに手を上げる。
「子供じゃ止まってくれ……たよ」
二人、中学校の制服姿である。普通、そんな二人に止まってはくれないだろう。
もちろん、彼女が特殊能力で小細工している。
後席ドアが開いて乗り込み、駅まで依頼。
「お急ぎのようですね」
「ええ、親がちょっと……」
大嘘、でもあるまい。
「承りました」
少し荒い気もするが速度上げ目で走ってくれる。
走りながら思考の残り香を探す。どんな思いでこの道を行かれたか。
なのだが。
引き続き何も感じない。この道や風景と紐づけされた“思い”は存在していない。
それは、もっと集中する何かがあったのか。
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