【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -13-
駅までの10分ほどが異様に長い。あと少し、のところで信号に捕まり、その向こう、高架線路を走り出す銀色の電車。
「ああ、特快(とっかい・特別快速のこと)行っちゃったねぇ。すいません」
それは時間ロスを示す。しかし、運転手氏が謝ることではない。
「いえ、お気になさらず」
青になり発進し、そのわずかな距離も可能な限り加速して、駅前広場、車寄せに止まる。
平沢が財布をガサゴソしている間にクレジットカードでチェック。暗証番号でOK。
「はい確かに。ご無事を祈ります。何か急ぎのタクシー必要でしたらこちらお電話ください」
運転手氏はプリントアウトされた領収書と名刺をくれた。
彼女はそこで初めて運転手氏の顔を見返し、日焼け顔の中年男性と知る。
頼んでおいて顔も見ないとか少し失礼だった。
「ありがとうございました。助かりました」
笑顔で言ってドアを開けてもらう。
「えっと……お金は……」
平沢がお札片手にキョトン。
「クレジットカードで切りました。お礼言って」
「お、おう。あ、ありがとうございました」
「いえいえ」
降り立つ。走り出すタクシーを平沢が茫然と見送る。
「姫ちゃんすげえ……」
「現金は節約すべき。まずこの駅で係の人に訊いてみましょう」
「おう」
我に返ったように平沢が歩き出す。駅は高架線だが建屋は地上だ。レンガの橋脚で支えられた線路のガードをくぐると、自動改札機が並ぶ様が見え、その左脇、対面販売用“みどりの窓口”の看板あり。
近づいて中をのぞき込むと駅員が身体をひねった。
「はい、どちらまで」
「すいません、実は人を探しています。こういうおばあちゃんが福島までの切符を買いませんでしたか?」
画像を見せる。すると窓口係員の若い男性は困ったように。
「さっき警察に聞かれた件かな?だったら、ないなぁ。済まんけど」
「そうですか……」
食い下がっても仕方ないので一旦窓口を離れる。
ここへ来ていない?
ここを通ってない?
間違っている?
自動改札機に触れてみる。思いは残っていないか。
“ベクトル”を感じようとしてみる。それは予知予感を得ようとする行為に近いのかも知れぬ。方向性のある“希求”は無いか。
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