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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -16-

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 総合するに“突然、訳が分からなくなる”……譫妄(せんもう)と呼ばれる状態に入る可能性は感じないが。
 病気のほか、夢や薬の副作用、手術の麻酔でもなったりするとも聞く。
……否定しきれない。そしてその状態で元の住まいに向かったのだとすれば。
 電車は神田で北へ向かう新幹線を含む他の路線群と合流し、そこから自分たちの線路だけ高架線路からさらに一段高い高架へ駆けあがって終着、東京。
 電車が止まり、ドアが開くと、大都会の空気と騒音。
 ホームに降り立つ。で。
 思わず立ち止まる。感じないのだ。思いを何も。
 テレパシー感度が落ちてる?否否、傍ら平沢の不安と、次どうすれば、という困惑の念を強く感じる。あ、後ろに人が邪魔ですね。ホームの真ん中まで移動して人の流れを避ける。
 どうすればいい。とりあえず。
「新幹線の乗り場へ行ってみましょう」
 確証があるわけではない。というか、ここまで来て他に出来ることはない。
「おう……」
 平沢が応じる。とはいえ自分から足が出ない。掌握している駅ではないからだ。ホームの上の案内板は“新幹線↓”要するにこのホームからコンコースに降りろ。そりゃそうだ。
 情報が欲しいのはその先だ。
1_20210629224501

https://www.jreast.co.jp/estation/stations/1039.html
「判る?」
「東北新幹線だろ。大丈夫だよ。行ったことあるから」
 平沢の後ろをついて行く。2段高架の上の階層から、途中に踊り場区間がある長く不思議なエスカレータで降りてコンコース。案内表示は20から23番線だとしてある。案内表示の「東北新幹線」を頼りにして歩く。東京駅を西端から東端まで横切る形。
 さて新幹線というのは特急列車であるから、乗車には乗車券と特急券を必要とし、両者揃って持っているかを確認する専用の改札がある。
 東京駅における東北新幹線のそうした改札は2か所。ともに“みどりの窓口”を傍らに備える。
 どちらも応じた行列。ロープでジグザグに仕切ってあり、人々がじっと待っている。彼女は長くアムステルダムで暮らしており、同様な高速列車“タリス(Thalys)”を知るが、チケットはネット予約の電子メールをプリントアウトすればよく、駅の改札もないので、この光景には違和感を覚える。割り込んで尋ねる?
 誰か係の……と見回したら、青い制服で首元にスカーフを巻いた、コンシェルジュのお姉さんがいたので、訊くだけ訊いてみることにする。
「すいません」
「はい」
 にっこり。

(つづく)

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