【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -15-
滑り込んできた白い列車の“自由席”を探して乗り込む(※)。ドアは車端のデッキ部にあって、客室とは自動ドアで仕切られている。ドアの向こうを覗くと満席。
他、幾人かの乗車客とともにデッキ部に立つことにする。ドアが閉まり、キシキシした機械音とともに列車は駅を離れる。
カーブで身をくねらせ、本線に合流し、特別急行東京行き、とアナウンス。※未指定券制度導入前
「俺、初めて乗るぜJRの特急」
「そうなの?」
・私鉄とJRが並走、新宿や東京に出るには運賃の安い私鉄を使うことが多い
・JRの特急は東京まで乗っても1時間未満であり、特急料金が惜しい
・ほとんどは新宿止まりなので、尚のこと「わざわざ乗る」意味も理由もない
・反対方向甲府方面へ出かける際はクルマなのでやはり乗らない
ちなみに発車してすぐは特急らしい加速を見せたが、間もなく速度が頭打ちのようになり、持て余して流すような走り方になった。それは前方に「特急以外」の列車が多く、追い抜くチャンスがないので、後ろから着いて行くようなダイヤになっているからだが、さておく。
東京まで一定の時間と空間が持てたことは確かなので情報を集める。依頼した画像認識は現時点検出なし。全部は膨大な時間がかかるので新幹線乗り場を優先してもらった。3時間分で検出されず。
「東京駅にはお見えになってないみたい……」
「え……」
・私鉄とJRが並走、新宿や東京に出るには運賃の安い私鉄を使うことが多い
「このルートの場合、JRを全く使わず東京駅へ出られる?」
「うん、新宿から地下鉄に乗ればいいから……そっちかなぁ」
「検索依頼すればいいよ」
私鉄の社名、地下鉄の路線名を聞いて追加の調査を依頼する。
ただ、そも、そのルートを取ったのだろうか?
JR一本に比して複雑すぎるのではないのか?
テレパス無感応の説明は成り立つが。
ともあれ東京駅へ行った方が良いようである。北帰行の結節点と考えられるからだ。画像検索とテレパシー検索の並走だ。
30分弱、ダラダラ走ってビルの谷間に入ると、ゴトゴト揺れながら線路が分岐し、新宿に着く。二人が一旦ホームに降りてスペースを空ける要があるほど大量の下車があり、客席に空きも出たので移ることにする。動き出して更にのろのろ運転だ。
さてこの先の車窓には見覚えがある。沿線の大学病院でちょっとお世話になったことがある。小児病棟とか遊びに行った。せっかくこの地に定住したのだからまた行こうか。
高速道路、高層ビル。意外な緑。
四谷に止まって下車客少し。それで車内の客はまばら。神田川に沿って東京まであと一息。
「おばあさまをこちらに引き取った後の大まかな変化を知りたい。健康状態を知ってる範囲で教えてください」
・転居2日後に体調を崩した。高熱と腹痛
・回復後はおおむね元気
・血圧と膝の持病有。近所で通う病院を決め、特に膝はリハビリ兼ねて毎日通院
「こちらで新たなお知り合いとかは?デイサービスとか使ってる?」
「知らない、というか聞いてないな。ごめん、親にお任せにしてる……」
「いいよ。それだけ判ってるだけでも大したものだよ。ありがと」
(つづく)
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