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【理絵子の夜話】サイキックアクション -09-

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 同等に巨人化した戦女アルヴィトの姿がそこに雄々しくあった。
 アルヴィトは、着衣をはぎ取った。
 黄金の裸身。流麗な曲線で構成され、ふくよかで輝くような乳房。黄金比を持って構成された腰回りの脂肪のたわみ。
 男の目線であれば、そのまま、性器を見ようとしたであろう。
 だから。
 その目が陰部に向いた瞬間、本橋美砂がPKを使った。
 魔ゼウスの“心臓”に深々と突き立つ、クリュサオールの剣。
 魔ゼウスは、自分で、自分の心臓を刺した形。
 理絵子は知る。霊体とて意思を紡ぐなにがしかの“無ではない領域”であり、応じて、無への還元も生じうる。
 それはプラスとマイナスの衝突。すなわち中和。
〈クリュサオールはプラスへ転じた〉
 自分の言動によって。つまり、如来の天啓は理に叶っていた。
 でも待って。それってクリュサオールと魔ゼウスが対消滅……。
 肉の耳に聞こえぬ絶叫であった。
 安らかな死ではなく“滅亡”への断末魔であった。
 魔ゼウスがバラバラと拡散してゆく。無数の粒子に分かれるように見え、ガス体への昇華のようにも見えた。
 魔と、ここと、彼我の空間を隔てるためのエネルギに消費されると判じた。
 アルヴィトが、腕を伸ばした。
 クリュサオールの“柄”。
 魔が閉じられる。
 周囲は、闇の中ろうそくで照らされた部屋のようであった。
 アルヴィトの裸身がろうそくのように輝いてそう見えているのであった。彼女は人間のサイズに戻ってそこにあった。
「理絵子。“魔”だぞ。良いのか」
 柄だけのクリュサオール。根元にわずかに残った黒い刀身。
「我が懐刀にいたしたく。ならば我が身は貴殿威光の残照あらたかにて魔物ら逃げ出すが故」
「おもしろい。魔をおびき寄せる道具とするのか」
「ええ、元は忌み嫌われた故の魔への転身。彼が私で良いというのであれば」
「よろしい。クリュサオール、選択せよ。我とともにヴァルハラへ向かい、我が刀身にて更なる光と化すか、闇として理絵子の裡(うち)にあり、魔をだます手先となるか」
 アルヴィトは自らの剣を抜いて立て、その金色の光を煌めかせて見せた。
 理絵子は知った。アルヴィトの聖剣はそうした“浄化された魂”が集まって刀の形態をなしている。
 心は心でしか動かせない。応じて心だけで出来た剣なのだ。だから魔であれど“切れ味”を有する。

(つづく)

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