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2021年8月

【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -20-

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「そうです。常磐線で太平洋側から入るルートです」
 彼女は平沢の顔を振り仰いだ。
 全ての点が一本の線に繋がった。
「お父様は郡山駅だって確か」
「そう……常磐線に行ったならそりゃ郡山で待ってちゃダメだよ。三春に着いてもまだばちゃんが着いちゃいねぇ」
「先回りしすぎたわけだ。すぐ三春へ戻ってもらって……えーと、ありがとうございました」
「いーえ。君たち三春に行くのかい?」
「はい。あ、いえ、家族が先に行ってますので」
 じゃぁ切符買って行け、となると困るので言を翻して頭を下げ、その場を辞す。“術”が解けた後、彼は何等か守秘義務に違反した等で処罰されるのだろうか。
「(意図したこと形を成さず)」
「姫ちゃんなんて?」
「えーとね、上野公園へ行きます」
「え?三春じゃなく……え、それってひょっとして」
 彼女は頷いた。
 彼は一度、その存在を見たことがある。
「レムリア案件ですから」
 階段上がってコンコースを逆戻り、“公園口”からICカードをピッして出場。その国立博物館や美術館、そして著名な上野動物園のある上野公園へ。

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(科学博物館前)
 外へ出てまず平沢進の父殿へ電話。
「タイムラグすごいからトランシーバみたいに語尾どうぞ、ってつけた方がやりやすいよ」
「ありがとう。……あ、父ちゃん進だ。ばあちゃんは上野から常磐線の特急に乗った。郡山には行ってない。すぐ三春へ行ってくれ。どうぞ」
 喋りながら二人は横断歩道を渡って公園内に進み、博物館類のある方向と逆、南側へ進む。著名な西郷隆盛像がある方。
『……警察から連絡来ないが?』
「上野駅で駅員に聞いた。どうぞ」
『……そのどうぞ、って何だ。まぁええが、上野にいるんか。上野?……そうか上野か、よく気付いたな。わがった。とにかく三春へ行くわ。お前は戻れ』
 平沢は困惑して彼女を見た。
「とりあえず『はい』で。んで、電話オフでいいよ」
「はい。どうぞ、あ」
 平沢は言われたままにはいと言って電話を切った。
「軍の無線みたい」
「平和を愛する姫ちゃんとしては不本意だけどレムリアとしては強力な相棒」
 電話を返してもらってニヤッと笑うと、公園の中でも比較的木が少なく開けた場所へ出る。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -14-

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 魔、である。但し、悪魔のような伝承の存在ではない。
 人間に由来する。人類ホモサピエンスが10万とも20万年とも言われる地球での生存で自ら獲得した“根源情動の人格化”。
 理絵子は、権限を背負って、指さし、命じた。
「名乗れ、征服王」
「我が名はイスカンダール」
 声とともに地震が起きようとする。が、天地の力がそれを制する。
 娘たちは情報を共有する。その者は人間の時の名を“アレキサンダー”と言った。世界史に著名な大王アレキサンダーである。言語間の伝承変化で文字が入れ替わりAliskandarと書かれ、更にアラブ表記の文法からiskandarとなった。現代に使われる人名・都市名であり、著名な映画等でも町の名、星の名として使われる。
 英雄。
「だけど、裏返せば破壊と殺戮の体現者」
 理絵子の知識を美砂がひっくり返した。
 史実は肯定的な書き方であり、彼の名の付いたゲームキャラクタでも戦闘能力は高い。だが、現代に通じる覇権主義の原点という見方も出来る。
 欧米の価値観の原点。それは中南米文化からの黄金の簒奪であり、奴隷商売であり、アヘン戦争、そして今も人種差別に色濃く残る。
 アレクサンダーではなくアラブの伝承名イスカンダールを名乗った理由。
「従うか、死か」
「問うに能わず。去ね(いね)、アレクサンダー」
 理絵子のゼロ回答にアレクサンダーは大地引き裂けと念じたようである。従わぬなら“生きるための場所”を破壊しようとしたようだ。しかしこちらの側には文字通りの“後光”が輝く。
 大地へ掛かる力を大地が拒否する。
 すると……アレクサンダーは、天文学的事象を惹起させようとしたようである。
 だが、天を司る存在がそれを抑える。
 所詮出自は“人”に過ぎぬ。
 そこへ。
 蹄の音高らかに天馬が現れ、長剣携えた金髪が翻る。
 戦女アルヴィト。
「待たせた」
 彼女らに微笑んで見せたその手には。
 椰子の実サイズのスズメバチの巣。
 人としてのアレクサンダーは蜂に刺された後に昏倒して世を去っている。
 果たしてアルヴィトは蜂の巣を放り上げ、二つに切り分ける。
 蜂が雲のように広がってアレクサンダーに襲いかかる。
 それは彼の“トラウマ”形象化と彼女らは気づいた。
 アレクサンダーの意識ベクトルが自分たちの指向を離れる。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -19-

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Ultrabaka

 東京からの短い道中、隣接する新幹線は秋葉原のあたりから地下に潜った。対して自分たちはより高いコンコースへ上がった。
 その国立博物館に行った際の記憶を当たるが、妙に天井の低い通路を通ったことが印象に残っているだけで、目の前の光景とは異なる。

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 見えないし思い出せないなら感じるしかない。目を閉じて得ようとするのは人々に去来する“新幹線”の思い。その発出多い方向へ向かえば良い。
「姫ちゃん?」
「大丈夫、付いてきて」
 それは頭痛持ちの娘が眉をひそめてこめかみを押さえながらフラフラ歩いているの図であって、平沢進としては困惑するしかあるまい。
 12番線を行きすぎ、改札口で行き止まり。新幹線は19番線からだが、その間の番線はどこに?仕方なく階段を下りる。
 と、託宣のきらめきを持って確信が訪れる。左手の“みどりの窓口”相原学から聞いたのはここだ。
「あの!」
 彼女は、今から休憩であろうか、窓口に“他へお回りください”の札をさして立ち上がろうとする男性の係員に声をかけた。
「はい?」
 男性は少し不機嫌そう。年齢に応じて額が広いのだが、そこに皺が寄る。
「突然すいません。人を探しています。こういう高齢の女性が福島三春までの切符を買いに来ませんでしたか?」
「困るんだよねー」
 舌打ち混じりのその声は、窓口内部の他の係員の注目を集めたようである。
 そのうちの一人、ちょうど立ち上がった黒縁メガネの若い男性と目が合う。
 この人だ。
「(意図なさないこと形となりて)」
「姫ちゃんなんて?」
 黒縁メガネの男性はこちらへ歩み寄って来た。
「んー?見せて?あ、やっぱそうか、このおばあちゃんなら覚えてるよ」
「マジですか」
 これは平沢。
「おい……」
 不機嫌な男性の表情が厳しくなった。“個人情報をべらべら喋るな”というところか。
「いいじゃないすか。新幹線を勧めたんだけど『そんなもんはねぇ。汽車で行く』って。上野にいらしたわけだし、ああ、八戸(はちのへ)が尻内(しりうち=八戸の旧駅名)な感じかなと思って“ひたち”でいわき経由の乗車券と特急券を出しました」
 ぞんざいと丁寧が混じったその話し方は彼女の呟いた言葉の作用による。
「いわきは昔の平(たいら)だと言ったら、ああ、それなら判るってニコニコで買って行かれました」
「すいません鉄道には疎いので、つまり新幹線を使わずに三春へ行かれたと」

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -13-

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 それは3人共通の疑問であると同時に、その者への問いかけであった。多く覇権主義・独裁者は魔性になぞらえられる。だがその目指すところ極めると国や組織が滅ぶ。
 自分だけいい目を見たい?そんな子供じみた情動?
 その時。
 意思だけ来たが会話形で記す。
〈逆に問う。汝らは何故生きる〉
〈古風な……〉
〈簡単だよ〉
 登与のツッコミを美砂が遮った。
〈生まれたから。生き物として生まれたからには生き物として、人間として、らしく生き、そして死ぬだけ〉
〈霊能として生まれた故は〉
〈ひとつ、死を恐れるなかれという証として。もうひとつ、心があるべき様であるように、心で直接知ることが出来るように。その点で、私たちは、選ばれた者だと自覚している〉
〈好きように出来ようが〉
 悪いことし放題だろ?
〈しない。希有なる力だからこそ、それを本当に必要としている心のために用いる。そのために生まれたと私たちは信じる〉
 美砂がそこまで言い、理絵子は継ぎ足した。
〈だから私たちは、あなたに何をされても従わないし、そして絶対に負けない〉
〈身も心も滅せよ〉
 それは肉体生命の殲滅のみならず、霊体としての滅亡も意図した。
 魂を消すことが出来るのか……
 “存在意義”を失わせることは出来る。すなわち、生きていても、意思だけあっても意味が無い。
 ……壊滅。
 どうやって。
 天啓を得る。地球生命の根源。
 大日如来真言。
「オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン」
 手指組み合わせて印契を切る。
 大日如来……日本人は古来、天照大神との親和性を見いだした。その絶対的最高位は富士山信仰とも深い。
 すなわち“やまとの国”の天地(あめつち)の化身である。通じて浮かび上がった魔性なるものの正体。

(つづく)

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