【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -19-
東京からの短い道中、隣接する新幹線は秋葉原のあたりから地下に潜った。対して自分たちはより高いコンコースへ上がった。
その国立博物館に行った際の記憶を当たるが、妙に天井の低い通路を通ったことが印象に残っているだけで、目の前の光景とは異なる。
見えないし思い出せないなら感じるしかない。目を閉じて得ようとするのは人々に去来する“新幹線”の思い。その発出多い方向へ向かえば良い。
「姫ちゃん?」
「大丈夫、付いてきて」
それは頭痛持ちの娘が眉をひそめてこめかみを押さえながらフラフラ歩いているの図であって、平沢進としては困惑するしかあるまい。
12番線を行きすぎ、改札口で行き止まり。新幹線は19番線からだが、その間の番線はどこに?仕方なく階段を下りる。
と、託宣のきらめきを持って確信が訪れる。左手の“みどりの窓口”相原学から聞いたのはここだ。
「あの!」
彼女は、今から休憩であろうか、窓口に“他へお回りください”の札をさして立ち上がろうとする男性の係員に声をかけた。
「はい?」
男性は少し不機嫌そう。年齢に応じて額が広いのだが、そこに皺が寄る。
「突然すいません。人を探しています。こういう高齢の女性が福島三春までの切符を買いに来ませんでしたか?」
「困るんだよねー」
舌打ち混じりのその声は、窓口内部の他の係員の注目を集めたようである。
そのうちの一人、ちょうど立ち上がった黒縁メガネの若い男性と目が合う。
この人だ。
「(意図なさないこと形となりて)」
「姫ちゃんなんて?」
黒縁メガネの男性はこちらへ歩み寄って来た。
「んー?見せて?あ、やっぱそうか、このおばあちゃんなら覚えてるよ」
「マジですか」
これは平沢。
「おい……」
不機嫌な男性の表情が厳しくなった。“個人情報をべらべら喋るな”というところか。
「いいじゃないすか。新幹線を勧めたんだけど『そんなもんはねぇ。汽車で行く』って。上野にいらしたわけだし、ああ、八戸(はちのへ)が尻内(しりうち=八戸の旧駅名)な感じかなと思って“ひたち”でいわき経由の乗車券と特急券を出しました」
ぞんざいと丁寧が混じったその話し方は彼女の呟いた言葉の作用による。
「いわきは昔の平(たいら)だと言ったら、ああ、それなら判るってニコニコで買って行かれました」
「すいません鉄道には疎いので、つまり新幹線を使わずに三春へ行かれたと」
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