【理絵子の夜話】サイキックアクション -14-
魔、である。但し、悪魔のような伝承の存在ではない。
人間に由来する。人類ホモサピエンスが10万とも20万年とも言われる地球での生存で自ら獲得した“根源情動の人格化”。
理絵子は、権限を背負って、指さし、命じた。
「名乗れ、征服王」
「我が名はイスカンダール」
声とともに地震が起きようとする。が、天地の力がそれを制する。
娘たちは情報を共有する。その者は人間の時の名を“アレキサンダー”と言った。世界史に著名な大王アレキサンダーである。言語間の伝承変化で文字が入れ替わりAliskandarと書かれ、更にアラブ表記の文法からiskandarとなった。現代に使われる人名・都市名であり、著名な映画等でも町の名、星の名として使われる。
英雄。
「だけど、裏返せば破壊と殺戮の体現者」
理絵子の知識を美砂がひっくり返した。
史実は肯定的な書き方であり、彼の名の付いたゲームキャラクタでも戦闘能力は高い。だが、現代に通じる覇権主義の原点という見方も出来る。
欧米の価値観の原点。それは中南米文化からの黄金の簒奪であり、奴隷商売であり、アヘン戦争、そして今も人種差別に色濃く残る。
アレクサンダーではなくアラブの伝承名イスカンダールを名乗った理由。
「従うか、死か」
「問うに能わず。去ね(いね)、アレクサンダー」
理絵子のゼロ回答にアレクサンダーは大地引き裂けと念じたようである。従わぬなら“生きるための場所”を破壊しようとしたようだ。しかしこちらの側には文字通りの“後光”が輝く。
大地へ掛かる力を大地が拒否する。
すると……アレクサンダーは、天文学的事象を惹起させようとしたようである。
だが、天を司る存在がそれを抑える。
所詮出自は“人”に過ぎぬ。
そこへ。
蹄の音高らかに天馬が現れ、長剣携えた金髪が翻る。
戦女アルヴィト。
「待たせた」
彼女らに微笑んで見せたその手には。
椰子の実サイズのスズメバチの巣。
人としてのアレクサンダーは蜂に刺された後に昏倒して世を去っている。
果たしてアルヴィトは蜂の巣を放り上げ、二つに切り分ける。
蜂が雲のように広がってアレクサンダーに襲いかかる。
それは彼の“トラウマ”形象化と彼女らは気づいた。
アレクサンダーの意識ベクトルが自分たちの指向を離れる。
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