【理絵子の夜話】サイキックアクション -15-
「理絵子!」
アルヴィトが剣を抜き呼ぶ。
「はい!」
「私はこの者に永遠の戦いを挑む。その間に時空の継承を閉じよ。されど我が髪は我が分身としてそなたらに力を与える」
それは3つの指示と結論を示していた。すなわち相容れぬ価値観は距離を取るより無いのであり、
アルヴィトはアレクサンダーを異世界へ連れて行こうとしているのであり。
再びこの戦女と会うことは無い。
「はい!」
理絵子は応えた。その3つが示すもの“自立せよ”。
「小気味よい。汝らには太陽と月と大地が味方する。以後この“大王”に感化された者が挑んでくるかも知れぬが排除できる。否、排除せよ。征服せんと欲する者を万物を持って排除せよ!」
「お元気で!」
理絵子はそう応じた。肉の身持たぬ存在に“元気”もへったくれも無いのだが。
「お前もな」
戦女は大剣構えて強気に笑んで見せ、その剣でアレクサンダーに襲いかかった。
永遠に戦いを挑み続ければ、アレクサンダーが人間世界、この世に出てくるヒマは無い。
結果として人間世界に超常の戦いは現出しない。
示唆一つ。実は聖書に言うハルマゲドンは、遠い過去から永遠の未来まで続くそうした戦いなのではないか。「そのとき、天で戦いが起こった」とは黙示録の一節である。それは永遠の過去の一点であり、天使たちは今もずっと戦っている。
だから、巨大な超能力で地球生命が脅かされる可能性は低い。
ただ、そういう“思念”自体は渦巻いていて、人がネガティブな意識を持つと、容易に共振し、通じて“悪意持つ超能力者”は発現しうる。
自分たちに超能力が備わっているように。それは言わずもがな、自分たちも“戦い続ける”責務を負う。
錫杖を振るい印契を描き、真言を口にして封印をなす。
「……ドシャコ」
“学校”はにわかに全面がガラスのそれと化し、次いで耳をつんざく音を立てて崩壊を始めた。ガラスの割れるあの音が空間引き裂いて広がり、応じてキラキラとしたガラスの破砕片が煙のように舞い上がる。
それはそれで危険なのではないか。
美砂が手のひらを広げた。
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